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もの憂いげな純情 4
いたたまれなくなって散らばったノートやペンを拾い集め、彼女に渡し立ち去ろうとしたとき、後ろから問いかけられた言葉に思わず血の気が引いた。
「あの……カズとなんかあったんですか?」
振り向いたとき、俺は恐ろしく冷たい表情をしていただろう。
「……何かって、なんですか?」
「え、いや……あの。最近、カズ変だから」
俺の表情につられたのか強ばった顔になった彼女は何を思って俺に聞いているのだろう。
深い意味がないのはわかっているけれど、心に余裕もなく、聞き慣れない和臣の愛称も相まって複雑な気持ちになってくる。
「それが、自分と関係があるって言うんですか?」
抑揚のない声は思いの外冷たく響き、すると彼女は俯いた。
前髪が顔にかかり、どう答えようか迷っているのか長い睫毛が揺れている。
「最近、あなたの話をしなくなったからです」
「……たまたまでしょう?」
返した言葉に彼女はかぶりを振った。
「でもカズったら変なんです。ずっと何か考えている風にぼーっとしてたかと思えば、私がしつこくあなたの話をしたら、昨日は急に怒りだして、『陽斗には近付くな』ってひどくないですか!?」
その言葉で、心のほんの片隅に僅かにあった希望めいた願望は粉々に打ち砕かれた気がした。
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