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恋しく慕わしい 13
和臣は考えるように腕を組みながら首を傾げた。
「いやー、なかったかもな」
「え?」
「そりゃ優しくなるし甘くもなるよ? 彼女だし。好きだから付き合ってるわけだし。でも……ここまで甘やかしたいって思ったのは初めてかも」
「はじめ、て?」
思いもよらない答えに思わず目をしばたたかせた。
「うん。初めて。陽斗には甘えたいなーとも思うし甘やかしたくもなるんだよな」
初めてなんだ……。そんなことを思っていたら和臣が俺の頭を撫でた。
「そういうの嫌?」
「……や、じゃない」
すると歯を見せて笑った和臣はチュッと音をたてながら触れるだけのキスをして、またぎゅっと俺のことを抱き締める。
「ずっとこうしてたいけどさ。このままじゃ、時間がいくらあっても足りないから泊まる用意してくるな」
「うん」
泊まる準備をするために一度家に帰るという和臣に、自転車の鍵を渡した。
でもなかなか行こうとしない和臣の背中を押すように玄関まで行くと、やっと靴を履いてドアに手をかける。
「すぐに帰るからな」
「わかってるから、はやく行けよ」
「もっと名残惜しそうにしろよ」
「だからはやく行けって」
渋々出ていった和臣を見送り、窓の外を見ていると猛スピードで自転車を漕いでいて思わず笑ってしまった。事故るなよ。
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