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恋しく慕わしい 12

「な、なんだよ急に」 落ち着いた時間を過ごしていると抱き合ったまま和臣がぼそりと言うので、思わず腕の中から逃れようとしても、それを和臣が許してくれず、それでも体を押し返したら目が合った。 目が合うなり和臣は柔く微笑み俺の頬に優しく触れる。 「自惚れたいと思ってさ。これからも頑張る為に」 「そんな言い方ずるい」 そんな嬉しそうな顔して言うなんて、何も言い返せなくなるじゃないか。 「俺はずるいよ。知らなかった?」 クスクスと笑い声が聞こえて、耳まで熱くなる。 なんだか心まで丸裸にされているみたいで恥ずかしいんだけど、和臣があまりにもわくわくした顔つきだったから力抜けした。 「……和臣以外なんて考えられなかった。和臣とキスできるとも思ってなかったけど」 俯いたまま告げて、しばらくしても和臣が何も言わないのが気になって顔をあげてみれば、柔らかく笑う和臣が、俺の髪をすいてきた。 っていうか、さっきからのこの甘い雰囲気って一体何なんだ。 「……和臣っていつもそうなのか?」 「何が?」 「だから、つ、付き合ったやつに……あ、あまくなるっていうか…優しくなるっていうか……いつもと雰囲気まるで違う……」 言ってるそばから恥ずかしくなってしどろもどろになったけど。 今まで付き合った彼女も、こんな顔を見てきたのかなって思ったら少し妬けてしまったのだ。

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