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恋しく慕わしい 15

電話の向こうでクスクス笑う声が聞こえる。 『オレに悪いとか思うなよ。お前がオレを誰かの代わりにしてるのを知ってて付け込んだんだから』 「付け込んだって、お前……」 『だってそうだろ? あわよくばって思ったわけだしさ』 「ちょっと待て。どう考えても悪いのは俺の方だ」 でも賢は飄々とした口振りのまま一向に聞き入れるつもりはないらしく。 『いたいけな高校生をナンパした時からオレが悪いんだよ』 「言うほど子供でもなかっただろ」 『そうそう。口答えばかりする陽斗のが好みだよ』 「話にならねぇな」 すると賢は愉快そうに喉を鳴らして笑った。賢が俺に気を遣わせないために言ってるのは充分にわかっている。 最後の最後まで。ほんと、賢って……変なやつ。 「ありがとうな」 『だからオレは毒気のない陽斗なんかつまんねぇの』 「それでも、ありがとう」 すると電話口でまた賢がケラケラと笑った。 『天下の陽斗も形無しだな。なぁ、陽斗。最後に質問していいか?』 「いいけど。なんだよ」 『お前の目には、世界は何色に見えていた?』 「何それ」 『いいから答えてくれよ。出会った頃、世界が終わったような目をしてたお前には、世界は何色に見えていたんだ?』 考えたこともなかった質問を静かに考えてみる。思い浮かんだ色は一色しかなかった。 「……群青色かな」 『お前、青春のど真ん中で寂しいやつだな』 「賢が言えって言ったんだろ」 『悪い悪い。じゃあ、最後にもうひとつだけ。オレは何色だ?』 世界の次は賢かよと思いながら、思い浮かべた色をそのまま答えた。 「赤とかオレンジとかの暑苦しい色だよ」 『そっか、暖かい色か』 「暑苦しい色だ!」 この質問に何の意味があったかなんてわからないけど、賢は楽しそうにひとしきり笑うと何故か『ありがとう』と言った。

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