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偏愛ロジック 20【終】
「どうした?」
「お、おれ、今日こんな服なんで、やっぱり、い、行けないです」
真壁は白衣の下に来ているパーカーの裾を握りしめて震えていた。
「なんで?」
「だ、だってダサいから。河北さんに恥ずかしい思いをさせると思います」
「思わないけど?」
「で、でも。河北さん、か、格好いいから、おれ、河北さんみたいにお洒落じゃないから」
オレってどんなイメージなんだよ。
「気取らない居酒屋とかならいいんだろ? つか、最初から気取らない居酒屋以外の選択肢はなかったけどな」
じゃあ、あとでな。と声をかけて真壁の頭をぽんと撫でればまた顔を真っ赤にしていて面白かった。
あいつ、オレのことが好きって言ってたけど、オレがゲイだって知ってて言ってるのかな?
知らずだったらかなりのチャレンジャーだな。
そんなことを考えていたら、また笑いが込み上げてきた。
もうすぐ今年も先輩の誕生日がやってくる。
でも、今年の先輩の誕生日はいつもとは少し違った気持ちで迎えられそうな気がした。
変なのも現れたしさ。
真壁ってなんか見るからに野暮ったそうな奴だよな。そんで鈍そう。
からかい甲斐はあるけど、やっぱタイプじゃないけどな。
そう思っていたから…───。
少しだけワクワクした気持ちが芽生え始めていることに気付くのはもう少し先のこと。
その気持ちが変化するのは、もう少し更に先のこと。
偏愛ロジック【終】
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