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偏愛ロジック 19

でも、知っていて欲しかったんだ。 先輩がいなくなったことで、先輩を失った悲しさを皆が抱えていたことを。 15歳での決断は早すぎたことを。 14歳のオレには先輩は大人に見えていたけど、今のオレからしたら全然子供だ。 たった15年で何を見て、何を悟って、何に限界を感じたのか。 立ち向かえとは言わない。 ただじっと待っていればいつしか暗闇から抜けて明るい世界が広がったかもしれないのに。 そして何よりも、愛されていることを知っていて欲しかった。 それに、ただそばに居たかった。 ただ、そばに居れたらよかったんだ。 オレは先輩の光にはなれなかったけどさ、暖かい色って言われて本当に嬉しかった。 先輩にありがとうと言われて舞い上がるだけで何も気付けなくて。 好きな人に何もしてやれなかったダメなやつだけど……。 理不尽な荒波に揉まれながらも、世界は色を失わずに今も一生懸命生きているよ。 すぅーっと息を吸い込んだ。 春が近いようだけど、鼻腔を通過する空気はまだ冬らしくピリッとしている。 「か、河北さん!」 名前を呼ばれて振り返ると、そこには息を切らした真壁が立っていた。

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