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偏愛ロジック 18
「飲みに行くなら定時で上がれよな」
そう言って屋上を後にすると、後ろから「はい!」と、大きな返事が返ってきて噴き出しそうになる。
なぁ、先輩。
オレにはこの青空は真っ青に見えるし、流れる雲は白く見える。
目にするもの全てに色があって、楽しいと思ったり悲しいと感じたりしながら生きてるよ。
本当に先輩にはこの世界には色がついてないように見えたのか?
本当に先輩は感情を感じなかったのか?
オレは思うんだ。
先輩は何も感じないわけじゃなかったと思う。
ただ、人一倍感受性が強すぎたんじゃないか。
感受性が強すぎて、周りに理解してくれる人がずっといなくて孤独だった先輩は、とても大きな寂しさの中にいた。
あまりにもその寂しさは自分から見えないくらい大きすぎて、大きすぎるからこそ覆われてしまえば全てが暗く見えてしまい、それで色がなくなってしまったのではないか。
だからオレは、先輩は誰よりも寂しさを知っていたんだと思うよ。
でも今となれば、もう確かめようもないけれど。
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