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第2話 冷めた高校生
*
社長室のドアが開かれ、入って来たのは嫌味なほどにスーツが似合うやたらと美形な男だった。
年齢は二十代後半くらい。高校二年で十六歳の俺より少なくとも十以上は上だろう。
そいつはどっからどう見ても未成年の俺の姿に一瞬固まり、それから切れ長の目を鋭くさせ、問いかけて来た。
「……おまえ、誰だ?」
「あんたこそ、誰だよ?」
俺はそいつの正体を薄々知っていたけれども、あえて聞き返してやった。
「俺は今日からここで秘書として働くことになった――」
ああ、やっぱりね、昨夜親父から聞かされていた相手だ。
「あ、あんたが親父の決めた秘書か」
「は?」
俺の台詞にそいつは訳が分からないと言ったように首を傾げる。
「俺は高井田信一」
俺は、『こいつもきっと長続きしないんだろーな』思いつつも自分の名前を名乗り、続けて言ってやった。
「今日からあんたの上司だ」
「……あ?」
そのイケメンの眉間のシワがより深くなったのと同時に再びドアが開き、今度は親父が入って来た……秘書で愛人でもある美女、中田(なかた)リイナを引き連れて。
「やあやあ、沢口君、もう来てたのか。待たせて悪かったね。……信一、そこは父さんの席だ、どきなさい」
初めの言葉はイケメンに向かって、後の言葉は俺に向かって親父が言う。
「高井田社長、これはいったいどういうことですか?」
親父に詰め寄るイケメン。
「あれ? 話していなかったっけ?」
すっとぼける親父。
二人のやり取りを傍にあるソファへ移動して聞きながら俺は白けた思いでいた。
あーあ。これは今までの最短記録になるかもしれないな。
みんな高給につられて一週間は持つんだけどね。
訳の分からない展開に、目の前のイケメンから静かだけど鋭い苛立ちが伝わって来る。
……このまま回れ右して帰っちゃうかもしんないな。
ま、別に俺はどうなっても構わないけど。
そんな思いであくびをかみ殺していると、親父が俺の方へ言葉を放った。
「信一、この人は沢口剣さん。おまえの新しい秘書だ」
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