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第3話 冷めた高校生2
「なっ!?」
反応したのは俺じゃなく沢口剣の方。
「どういうことですか!? 俺は高井田社長の秘書として採用されたはずじゃ……」
「……あー、私にはもうこの中田くんという秘書がいて、彼女に全てを任せているからねぇ」
親父はほっぺをポリポリとかきながら、リイナさんの方を見る。
「だから君には息子の信一の秘書をお願いするよ」
「はあ!? 俺がこのクソガキ……いや、ご子息の秘書!? だって、彼はまだどう見ても高校生でしょう?」
そう。親父は自分の秘書という名目で優秀な人材を採用しては、実際は高校生の俺の秘書にするという荒唐無稽というか詐欺まがいのことをしているのだ。
「ああ。信一は十六歳の高校二年生だよ。けど、高校卒業と同時に我が高井田グループに入って重役に就く予定だから。その時のためにも今から準備しといた方がいいかなと思ってね」
「そんな……」
「父さん、俺は顔が良いだけの無能な秘書ならいらないから」
俺にとっても迷惑な話だ。
親父の会社を継がなければいけないという決められた人生だけでもウザいのに、秘書もどきなんかつけられたらかったるくてたまらない。
俺の言葉に親父に詰め寄っていた沢口剣がピクッと肩を震わせたかと思うとこちらをすごい目で睨みつけて来た。
そしてソファの俺の方へと歩いてくると、顔を至近距離まで近づけて来る。
うわお。こいつ、マジ超イケメンっていうか美形。
不本意ながらその端整な顔にほんの少し見惚れてしまった俺に、剣はにっこりと笑いかける。
ただしその笑顔は口元だけのもので、目は全く笑っていない。
「よろしくお願い致します。今日から秘書にならせていただく沢口です」
剣は丁寧な言葉で言ったあと、俺にだけ聞こえる声で囁いた。
「大人をなめてんじゃねーぞ」
その冷たく鋭い声音に、悔しいけども俺はぞっとしてしまった。
こうして現役高校生の俺に秘書ができたのだった。
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