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第8話 愛の海
文雄の先についていた我慢汁を到流はきれいに舐め取り、飲み込んだ。
濡れ光っている瞳をこちらに向けたまま到流は文雄の男根を口に含んだ。濡れた温かい軟体が自分のペニスを包み、刺激していく。
到流は小さな口を広げて、文雄のものを一生懸命に咥えていた。潤んだ瞳が余計に文雄の欲情をそそる。
「おお、到流、気持ちいい」
粘膜に擦られると肉棒に甘痒い快感が起こって思わず声を漏らしてしまう。我慢できなくなった文雄は、到流を寝かせ足を開かせた。
頬を赤らめ指を口に添えている到流が目に涙を溜めていた。枕元の台にあったローションを使い、指を到流の秘筒の入口にあてがった。到流は息を殺して待っていた。
少しずつ指を入れていく。堪えきれなくなったのか、到流が高い声を出して首を反らせた。指への締め付けが緩んだ頃、文雄は自分のものをあてがった。
少し前に進めるとニュプっと音が鳴って傘が入った。
「んあっ、ゆっくりぃ……」
到流が文雄の腕をつかんできた。その力加減が可愛かった。
菊門の入口が文雄の屹立を締めつける。かと思うとふっと緩んで生温かい媚肉が出迎えるように文雄を包んで奥へと誘う。
「ああ! んあ! あは! おっきいぃ……」
到流は首を反らせて涙を流し、シーツをつかんだ。トンと男棒の先が肉壁にあたる。
「あたってるぅ! んんん! あ、奥ぅ!」
到流の叫びと同時にまたそこもキュっと文雄のものを締めてくる。
「おお、奥も締まる……っ」
入口と最奥の熱い生肉で締められながら、文雄の淫根はくちゃくちゃと音を立てて抽挿を繰り返す。
泣いて嬌声を上げる到流が愛おしくて、覆いかぶさって唇を奪う。柔らかい唇を吸って引っ張り、音を立てて舐めた。舌を奥深くまで入れ、頬の内側や前歯をまさぐり、舌と舌を絡ませてもつれ合わせた。
どういう気持ちで自分を受け入れているのだろう。痛いのかもしれない、でも到流も抱きしめ返して求めてくる。そんな到流のことが憎いような食べたいような気持ちになり、強く抱きしめて余計に腰を強く振った。
「到流、愛してるよ、大好きだよ、ああ到流!」
「……んぁっ、中瀬さん! 僕も、あはん、愛してるっ」
「お前に出会えて良かった、こんなにも好きになれる奴に出会えて良かったよ!」
「僕も! っんんうんふっ」
何度吸っても何度舐めても到流の唇は柔らかくて弾力がある。そこから出る唾液は甘くて、高い喘ぎ声はずっと聞いていられる。弱い力で抱きしめ返すこの体が愛おしい。ずっと守ってやりたい。ずっと抱いていたい。
歪む顔も美しくて、輝いている。きれいな肌が薄暗い灯りのもとで艶を出す。男なのに男と思えないような色気が文雄の昂りを一層高めてくる。特別な生き物のように見える。
到流をそのまま持ち上げ、あぐらをかいた状態の自分の上に跨らせる。
「自分で動いてみて」
潤んだ瞳でうなづくと到流はゆっくりと腰を上下させた。
「んんはっ、あ、は、わぅ、はああん」
到流の方から口づけを求めてきて吸いつく。細い腰を両手で持ってさらに激しく動かすと、到流の唾液が流れてきて、喘ぎ声が口の中で響いてくる。
四つん這いにさせると、さっきの光景が浮かんで興奮がまた蘇る。小さくて形のいいお尻の真ん中の深紅色の穴がピクピクと蠢いていた。
文雄は剛直を蕾穴に射れた。肉傘が入ったところで到流の首が背中側に反り返る。
「んあっ」
「ゆっくりな」
少しずつ進めると、媚肉の囁きが良く聞こえ、襞の一つ一つの感触をちゃんと感じることができた。
「中瀬、さあん、それ、ああ、すごい感じる……っ」
「ゆっくりがいいんだな?」
「う、うん、いい!」
最奥まであたるとまた到流の嬌声が響き、傘も締めてくる。意思があるように文雄のペニスを熱い肉襞で握ったり緩めたりを繰り返し、快感を与えてくる。
絶頂を迎えそうになり、到流の顔を見ながら最後を迎えたいと思い直した。到流をまた仰向けにさせ足を開いた。覆い被さって到流の顔を見ることだけに集中する体勢にした。
手探りだけでアナルにあてがい、推し進めた。到流の眉根が寄せられた。
「はんあっっ」
さらに進めると、片手で枕を荒々しくつかみ、もう片手は文雄の首元に添えられた。
「んん……っあ、だめっ、あ」
途中に一部分だけコリっと固い部分があり、そこが何かが分かったので、この顔を余計に乱れさせたいと思ってしまった。
その一部分は前立腺だとすぐに分かった。そこに肉棒をあてぐいぐいと押した。
「あああ! そこはああ、だんっめぇ! わううう!」
「ここがだめ? なんで? ほら、ほら」
「ああだめ! おかしくなっちゃうって! んわああ!」
体をよじって頭を振り乱す到流から甘い香りが漂い、大きな声が耳を叩く。
「ん? ここも俺だけのものだよな? な?」
「うん! うん! そうだよ! だから、あ! 許して!」
「到流、いい、その顔がいい、可愛い」
「だめえ、ああ、お願い、あん、もう、もう」
「もうなに?」
「い……イっちゃ、イっちゃいそう!」
「いいよ、いけよ、ほら、おら、イった顔見せてくれよ」
文雄は余計に肉の塊に淫直をぶつけて感じさせた。
「ああ! イク、イック、いいい……っは、あ、は、んっ、い、いぃぃっ」
ピクンピクンと体全体を波打たせて、到流は触っていないペニスから白濁を自分の腹と文雄の腹にも飛び散らせた。
到流の瞳がゆっくりと開けられる。光を取り込みオイルを入れたように潤む目が文雄の支配欲と愛でる気持ちを一気に掻き立てる。
「可愛いよ、到流……」
ねっとりと唇を吸い、首筋まで垂れていた唾液を舌ですくって口に戻した。
子猫のように鼻で甘えた声を出す到流を壊してしまいたい衝動に駆られる。
同時に文雄の中から絶頂の兆しが現れる。キスをして胸の突起を舐め上げ唇で挟んで吸った。
「俺もイっていい?」
「いいよっ、イって、あはん」
腕で到流を包み込み、息ができないくらいに口に吸い付く。言葉にならないくぐもった声で喘ぐ到流を支配しながら射精の兆候が芯から湧き上がってくる。
「どこに出して欲しい? な? どこ? な!」
「んあっ、な、な、か、中に出してっ、僕のお尻の中にぃ!」
「……ん、う、イ、イクかも、うお、イク、イクッ、うおおおっ!」
◇◇
目の前で文雄の顔が歪み、体がビクンビクンと強い痙攣を起こす。
「んは、おっ、あっ、いっ、はっ」
文雄の絶頂の声が到流の気持ちを締め付ける。自分の体を使って射精をした文雄が愛おしくて、無防備に甘えているような、全てを晒してくれる姿を嬉しく思った。
到流の秘穴の奥で熱湯のような液体が飛び跳ねて肉壁にそれがぶつかってくる。灼熱の温度を持った波がやって来ては引いて行く。文雄の海から届いた波は、到流の浜でざわめいて、もう戻れない深さに浸食していた。
さっきまで文雄の中にあったものだと思うと、それが安心と悦びに変わる。文雄の体温を媚肉で感じる卑猥さに体の芯が疼いてしまう。
「はあ……ん、はあ……は……」
文雄は息を切らせながら到流の首元に顔を埋めている。文雄の心臓の音が伝わる。厚い胸板からドクンドクンと到流の薄い胸を叩いてくる。
顔を上げた文雄と微笑み合った。
「到流、もう俺たち戻れないよな?」
「うん、もう戻れない」
「いいか、俺で?」
「いいよ。僕は中瀬さんがいい。中瀬さんは僕でいい?」
「もちろん。俺も到流がいい。ずっと一緒にいような」
「うん」
キスをすると、汗なのか涙なのか、ちょっと塩っぱい味がした。
その塩味を舌で転がして、愛の液を交換し合っているうちに塩っぽさは薄くなってきて、また甘い味が高まってくる。
波は引いていったのかな。
そろそろ海の向こうから朝陽が昇り始めているような気がした。
舌を絡ませていると、砂の騒ぐ音が、耳の奥でずっと聞こえていた。
(了)
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