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ゆるふわ&あわもこ(1)

とまりだよっ!! お久しぶりなんだけど、僕は今猛烈に急いでるよっ!! なので、てきぱき自己紹介するよっ! B型牡牛座二十七歳男、職業は小説家っ! 本名の『丹野とまり』で書いてるよっ! 独身だけどかっこいい彼氏いるからねっ!ごめんねっ! えっとえーっと、あとなんだろ、性格? 性格は、マイペースっていうか、スローペースっていうか、のんびり屋さん。 この間ね、朝早い時間に電車で出版社へ行ったんだけど、通勤ラッシュに巻き込まれちゃってさぁ。 みんなすごいよねぇ。 車内ぎゅうぎゅうになってるのに、自分の乗りたい電車に乗れるし、降りたい駅で降りてくんだよぉ。 僕はね、まず電車に乗れなかったの。 だって車内はみっちりしてて、僕の乗れるスペースなんてないんだもん。 無理だよぉ。あはは。 僕でも乗れそうに空いた電車が来るまで、何本も何本も電車を見送って、ようやく電車に乗って出版社に着いた時には大遅刻だよぉ。 待ち合わせしてた編集の高月さんに、遅れますって電話したら「こんなことになると思ってたよ」って苦笑いされちゃった。 いやほんと、僕には向いてない世界だったねぇ。 就活失敗して、紆余曲折あって小説家になったけど、確かにこれじゃ会社員として就職なんてできないなって、改めて思ったよ。うんうん。 今から思うと、お祈りしてくれた各社人事の人たちは正しかったんだねぇ。 「とまりー、今何時?」 ん?もうすぐ七時半になるよぉ。 ……っあーー!! 僕たち急いでるんだった!! 「ゆーたっ!はやくはやく!」 「頑張ってるからもうちょっと待っててよ。この時間は道が混んでるんだよなー」 運転席のゆーたはうーんと伸びをして、ハンドルから手を離してる。 もー!! ゆーたったら!急ぐよって言ったのに! 「道が空いてれば五分で着くんだけどなー」 「八時までに間に合う?」 恐る恐る訊いてみたら、返ってきたのは爽やかな笑顔だけだったよぉ。 「察してよ、とまり。な?」 ……ぎにゃーーーーー!!!! ゆーたは悪くない。誰も悪くない。 強いて言うなら駄々こねてる僕が悪い。悪いんだけどーー!! ねぇ。 ええとね、運転席に座って、助手席の僕の頭を撫でてくれてるイケメンが、飯野佑太。 僕の大事な幼馴染で彼氏さんだよぉ。うふふ。かっこいいでしょ。 かっこよくて優しくて、気が利いて頭も良くて、スポーツでも料理でも何でもスマートにこなしちゃう、スーパーなダーリンなのです。 ゆーたは今年二十一歳で、僕とは六つ年の差があるんだけど、ゆーたの方がしっかりしてて、断然お兄さん。 僕もついついゆーたに甘えちゃう。

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