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第38話 決意と告白
正直、俊はとても怖かった。
でも……。
俊の脳裏に、頭を撃ち抜かれて殺された両親と兄姉の姿が浮かぶ。
十三年の月日を経ても、鮮明で生々しく、血の匂いまでをも伴って。
あの事件の夜がフラッシュバックすると、もうダメだった。
桐谷の話の恐ろしさよりも、自分から家族を奪った犯人たちへの憎しみと、そいつらを自らの手で殺すのだ、という決意が勝ってしまう。
「オレは自分の一生を復讐に捧げるって決めたんです。本当ならオレも十三年前に死んでいたかもしれない。だからもうなにがあっても平気です。復讐は絶対にやめません」
ずっと好きだった人……今でも好きな人……その人に、俊はきっぱりと拒絶の意を示した。
それは桐谷との決別の言葉のはずだった。
だけど。
「オレは許さない。俊、そんな生き方はやめるんだ」
桐谷のほうもあきらめなかった。
「いくら先輩でもオレの生き方まで決める権利はないでしょう? もう放っておいてください」
俊は自分の中にまだわずかに残る迷いを断ち切るように、きっぱりとそう告げた。
「放ってなんかおけないよ、俊。オレはおまえが好きなんだ。中学の頃からずっと、……愛してる」
「先輩……」
彼の突然の愛の告白は、俊の心を大きく揺さぶった。
断ち切ろうとした迷いが再び俊の心を縛り始める。決意と迷いがせめぎ合う。
十三年間も復讐を誓い生きて来たのに、再会して数カ月しか経たない桐谷の存在が、俊の心を大きく乱していた……。
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