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周焔編(氷川編)52

「白龍……ッ、白龍……ああ……ッ」  周のような大人の男にかかっては、経験の乏しい冰にはやることなすことすべてが快楽の波となって呑み込まれてしまいそうになるのだろう。もう自らがどんな嬌声を上げ、どのくらいの痴態を晒しているのかも分からないほどに、乱されまくっていった。  長く形のいい指が蕾を押し広げて侵入するのも分からないくらい昇天寸前にまで高められ、そのせいでか痛みどころか、普通ならば違和感を感じる蕾の中を掻き回されても快楽しか覚えないくらいに蕩けさせられていく。そうする内に一番いい箇所を周の指先に捉えられて、冰は思わずビクりと背筋を仰け反らせた。 「あぁ……あ……ッ、そこ……あ……白……ッ」  それは初めての後孔での感覚だった。巧みな周の愛撫の前ではひとたまりもないくらい、気持ち良くて頭も身体もおかしくなりそうだ。  快楽の波に呑み込まれそうな様子を窺いながら、周は自らもまた先走りでヌラヌラと光る雄を冰のそこへと押し当てた。 「……ッ、あ……ッ、は……! ひッああ……っ」  さすがに普通ではない衝撃を覚えたのだろう、冰はカッと瞳を見開きながら叫ばんほどの嬌声を上げたが、それとは裏腹に下肢は待ちわびたように周を呑み込んでいった。愛する男と繋がったことを本能で悟ったのだろう。 「掴まってろ――!」 「ん……うんっ、白龍……白龍ー……好き……大好き」  周は冰の両腕を自らの背中に回させると、ゆっくりと律動を始めた。如何な大人の周といえど、限界はあるのだ。  おそらくは初めて知る経験ながらも一生懸命に付いてこようとする冰の仕草のひとつひとつが愛しくて可愛くて、なるべくならば痛く苦しい思いはさせずに愛してやりたいと思えども、あまりの可愛さに理性がきかない。  雄の本能を剥き出しにしてもすべてを征服したい、手に入れて放したくはない、自分の中にだけ閉じ込めておきたい、そんな欲望が全身を這いずりうねるようだ。  周は渦巻く想いのままに愛しい者の中へと自らの証を放ったのだった。 ◇    ◇    ◇  熱く激しい交わりで互いの想いをほとばしらせた後、二人は乱れたシーツの海の中、肌を寄せて温もりを確かめ合っていた。周は利き腕で冰の頭を抱きながら、余韻のままにその額に口付ける。冰もまた、未だ夢幻の中にいるようにうっとりと瞳を蕩けさせたまま、愛しい男の腕に身を任せていた。 「辛くねえか?」 「ん、ダイジョブ……。俺、すげえ幸せ……夢みたい」  思ったまま、感じたままを口にする冰はまだ夢心地なのだろう。ぽうっとしたように天井を見つめながらも安心したように全身を預けて微笑んでいる。頬もうっすらと上気させたまま、その笑顔は朝露に濡れて光る薔薇の如く美しく輝いていた。

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