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周焔編(氷川編)57

 その翌朝のこと――。  冰はカーテンの隙間から差し込む眩しいほどの日射しを感じて、ウトウトと目を覚ました。場所はいつもの自分のベッドだが、隣には周が眠っている。それを目にするなり、昨夜のことを思い出してポッと頬を赤らめた。  だがそれもほんの一瞬のことだった。次の瞬間にはハッと何かを思い出したようにして、冰はガバッと布団から半身を起こした。 (そうだ、あれを片付けなきゃ……!)  慌てて飛び起きると、とりあえずローブだけを羽織って、向かった先は周の私室だった。昨夜、周に抱かれたままにしてきてしまった情事の跡を思い出したのだ。時計を見ればまだ朝の九時過ぎであったが、万が一にも真田やメイドたちにあのぐちゃぐちゃになったシーツの様子が見つかったりしたらと思うと、気が気でなかった。  ベッドリネンなどの交換は真田らの仕事とはいえ、情事の後始末などさせてはさすがに申し訳ない。それ以前に、そんなことが知れたら恥ずかしくてまともに顔を合せられなくなってしまう。冰は大慌てでバタバタとダイニングを横切った。  幸い、休日の食事は昼前くらいにブランチで取るのが通常なので、まだ誰もおらず、用意もされていない。ホッと胸を撫で下ろしながら中華風の装飾が美しいドアを開いた。真田らが来る前にそっとシーツを片付けてしまおうと思ったわけだ。  ところが――である。何と周の寝室はすっかりとメイキングが済んだ後のようで、綺麗に整えられていることを目の当たりにして蒼白となった。 (うそ……! まさか見つかっちゃったんじゃ……)  次第に心拍数が速くなる。オロオロしていると、周が寝ぼけ眼を擦りながらやって来た。 「おい、何事だ――」  冰がバタバタとベッドを抜け出していったことで目を覚ましてしまったのだろう。彼は昨日はとんぼ返りで関西へ行って来たこともあってか、熟睡していたようだ。 「あ、白龍! ごめん、起こしちゃって。あの、それが……さ」  冰がベッドと周を交互に見やりながら心許ない顔付きでいると、主人たちが起きたことを悟ったのだろう、相変わらずにビシッと黒のスーツで決めた真田が背後から顔を出した。 「うわ……っ!」  冰は気付くなり、慌てるまま大声を上げてしまった。 「何だ。どうかしたのか?」  周がポリポリと尻の辺りを掻きながら首を傾げている。起き抜けのまま追い掛けて来たのだろう、一応ローブは羽織っていたものの、下着を穿いてくるまで気が回らなかったらしい。彼が肌を掻く度に、チラチラとローブの隙間から見てはいけないモノがのぞいている。正直なところ朝から拝むには目の毒といえる。しかも真田がいる前だしで、冰はますます慌ててしまった。

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