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告げられないほどに深い愛28

「遼二……」 「紫月、好きだ。好きだ、好きだ。それしかねえ。上手い言葉なんざ思い浮かばねえ。俺はお前に惚れてる。どうしょうもねえくれえ惚れてる……!」 「遼……遼二……ごめん……! 俺、知ってた……。お前が好いてくれてることも、俺がお前しか好きになれねえことも。お前の気持ちも自分の気持ちも嫌ってほど分かってた! けど俺も……素直になれなかった」 「……紫……月」 「姐さんになるのは当然女じゃなきゃいけねえって……勝手に決めつけて勝手に悲しんで……俺らは一緒になれねえ運命なんだなんて自虐的な自分に酔ってただけなのかも知れねえ。それでもお前は俺を想い続けてくれるって、どこかでそんな期待して自惚れてる自分のことも嫌だった。けど、さっき……お前がいなくなっちまったって聞いて……もしもこのまま二度と会えなくなったらって切迫詰まってやっと気がついたんだ。このまま意地を張り続けてもひとつもいいことねえって。イジけて卑屈になって、お前を失うならそれは全部俺ン意気地のなさだって」  ちょうどその時に道内が組に乗り込んで来たとの報告を受け、姐として亭主が帰るまでしっかり組を守らなければという覚悟ができたのだと紫月は言った。 「俺が組を守り通せばお前はぜってえ無事に帰ってくる。もちろん氷川が付いてるから大丈夫だってのも……思ってたから……覚悟なんてカッコいいモンじゃ全然ねえけど。けど……例え側にいなくても、俺とお前は魂で繋がってるんだって思ったら肝が据わった……ってのかな……とにかく俺は……」 「紫月……!」  その先の言葉を取り上げるように激しい口付けと抱擁が嵐の如く奪い取っていった。  突然のそれは長く永く、息もできないほどに強引で荒々しい。荒れ狂うほどに、まさに魂と魂が一つになりたいといっているように、激しくも熱い口付けだった。 「……ッカ、いきなし濃いチュウ……とかよ……」  真っ赤に染まった頬を隠すように胸の中へと顔を埋める仕草が愛しくて堪らない。 「な、遼……。俺ら、似た者同士な?」  互いに臆病で、情けなくて、だが誰よりも何よりも強く互いを好きで好きで仕方ない。 「ああ、ああ、その通りだ」 「ほん……っと、しょーもねえな」 「ああ、しょうもねえ」 「バカだよな」 「ああ、大馬鹿野郎だ」  ヒシと抱き合い、互いの涙で互いの頬を濡らし合いながら笑った。 「紫月、俺の生涯の伴侶に、そして組の姐さんになってくれるか?」 「ん、うん……!」 「情けねえ亭主にゃ姐さんが必要だ」 「……ッカ! んじゃ、しっかりケツ叩いて立派な亭主になってもらわなきゃ……だな?」 「ああ、頼むぜ」  大好きだぜ。  愛してるぜ。  一人じゃ何も踏み出せねえ意気地なしだけど、お前が側にいてくれさえすれば、それだけで力が湧いてくる。どんな困難にも立ち向かっていける。どんな幸せも分かち合える。  この世で伴侶と呼べるのはお前ただ一人だ。  二人は固く抱き合い、しとど涙を流し合うと、急に照れたようにして肩を突き合いながら笑ったのだった。

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