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香港蜜月5

 それにしても美男美女の両親は、親とは思えないほどに若くて美しい。兄の風も周によく似て群を抜いた男前であるし、嫁の美紅もファッションモデルか女優のようだ。まさに見ているだけで溜め息が出そうなファミリーに歓迎されて、夢見心地に陥った冰であった。 「今夜の晩餐にはあゆみも来るから楽しみにしていてね! きっとあゆみも冰に会いたくてウズウズしているはずよ!」  あゆみというのは周の実母のことである。周に聞いていた通り、継母と実母は本当に親友のような仲なのだろう。息子が初めて連れてくる恋人との対面の席に、妾という立場の彼女をないがしろにすることなく、声を掛けて一緒に晩餐をと言ってくれる。そんなファミリーに周はむろんのこと、冰もまた心から嬉しく、感謝と感激でいっぱいになったのだった。  その夜は鐘崎と紫月、真田と源次郎も含めた全員で周ファミリーと共に晩餐を楽しんだ。実母の氷川あゆみも駆け付けて、冰との念願の対面を果たすことができたし、それぞれにとって幸せなひと時となったのだった。  晩餐が済むと、周と冰は鐘崎らと共に街中に取ってあるホテルへと帰ることとなった。 「何もホテルなぞ取らなくていいのに。ここへ泊まっていけばいいではないか」  父の隼はそう言って残念そうな顔をしたが、冰が緊張するだろうことを考えて周が敢えてホテルを予約したのである。 「今回は初めてのことですし、また次回の時には是非そうさせてもらいます。明日はこいつの育ての親の墓参りと、少し市内を観光して歩きますが、明後日にはまた寄らせてもらいますので」  周が言うと、隼も香蘭も納得して送り出してくれた。 「明後日はここで春節を祝った後、夜にはベイフロントで記念のカジノが開かれることになっている。お前さん方も皆で来るといい」  隼の経営するカジノでは毎年開催される一大イベントでもあるのだそうだ。 「ええ、楽しみに伺いますよ。では父上、母上、兄貴に義姉さんも、また明後日に」 「気をつけて帰るのよ。遼二と紫月、真田さん源次郎さんも本当にありがとう。また明後日お目に掛かれるのを楽しみにしているわね!」  香蘭もあゆみも、そして兄夫婦もそう言って見送ってくれた。 ◇    ◇    ◇ 「ねえ、白龍。ご実家に泊まらなくて本当に良かったの?」  街へと降りる車中で冰が遠慮がちに訊く。 「ん? ああ、構わんさ。それにホテルの方が気兼ねなくていいだろ?」  それはもちろん冰自身のことを気遣ってくれてのことと重々分かってはいるのだが、たまに帰省した時くらい親子水入らずで過ごしたいのではないかとも思ってしまうわけだ。何だったら自分だけホテルに泊まるからと言い出しそうな冰をグイと抱き寄せて周は言った。

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