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香港蜜月6

「家に泊まっても構わんが、お前がまたいろいろ気にすると思ってな。汐留にいる時でさえシーツがどうとか言ってるからな。せっかくの蜜月だ、そんな気を使わせるのは野暮ってもんだろうが」  ニヤっと白い歯まで見せて笑う周に、冰は大袈裟なくらいに赤面させられてしまった。 「ちょっ……、白龍ったら……! な、な、何を言い出すんだって……」  車中には鐘崎と紫月、真田も源次郎もいるというのにこの堂々ぶりだ。冰はアタフタと視線を泳がせて冷や汗状態だった。 「――ふ、てめえも相変わらずだな。冰の為だとかご尤もなことを言っちゃいるが、単にてめえが気兼ねなく楽しみてえだけだろうが」  隣の鐘崎から冷やかされて、周もタジタジながら、すかさずやり返す。 「他人のことを言えた義理か。そういうてめえだって親父さんの邸があるってのに、わざわざ俺らと同じホテルを取ってるじゃねえか」  そうなのだ。鐘崎の父親は海外での仕事を請け負うことも多いので、この香港にも自邸を構えている。場所も先程行った周ファミリーの邸と近所に位置する、こちらもなかなかの豪邸である。父親の僚一は現在は日本だが、邸には留守の間も管理をする家令らが常駐しているというのに、そこには泊まらずにわざわざホテルを取るのだから、目的は言わずと知れたものである。  所詮考えることは一緒だろうと鼻で笑われて、鐘崎もまた苦笑するのだった。  周たちの泊まるホテルは、明後日の夜にカジノが行われるというベイサイドである。言わずもがなゴージャスな最上階のスイートルームだ。鐘崎らとは斜め向かいの部屋だったので、二組のカップルたちはそこで別れることとなった。ちなみに真田と源次郎もフロアは同じだが、少し離れた部屋である。むろんのこと、これもまた壁一枚を通して声がどうのと気を遣うだろう冰のことを思っての周の事前の気回しだった。 「疲れたろ? いきなり家族全員集合だったしな」  一先ずはソファで寛いでいる冰に労いの言葉を掛ける。 「ううん、そりゃまあ最初は緊張したけどさ。皆さんやさしい方ばかりで楽しかったよ! ご飯もすごく美味しかったしさ!」  冰の口ぶりからは決して嘘ではないことが窺われる。彼はこれみよがしの世辞などは言わない性質なので、本当に楽しかったと思ってくれているのだろう。にこやかに瞳を輝かせるその様子に、周も安堵したのだった。 「それよりお前、メシの最中はどんな話をしてたんだ? お袋二人に囲まれて大変だったろうが」  母たちの希望で、晩餐の席は冰の両脇を継母の香蘭と実母のあゆみが陣取ってしまったからだ。

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