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狙われた恋人41

 次の日は陽が高くなるまでベッドの中で微睡み、向かいの部屋の鐘崎らとも合流して遅めのブランチを共にした。  本当はもっとゆっくりしたいところだったが、今回は予定になかった突然の香港滞在だった為、名残惜しいが午後の便で日本へと戻ることになった。周はむちろんのこと、側近の李と劉まで同行してきていたので、そう長く社を留守にするわけにもいかないからだ。二人は父や兄に見送られながら、鐘崎らと共に香港を後にしたのだった。 ◇    ◇    ◇  汐留へ帰ると、家令の真田がそれはそれは安堵した顔で迎えてくれた。彼もまた、無事に冰を奪還したことは電話で聞いていたものの、実際に元気な姿を確認できて心底ホッとしたようだった。  邸へ着いたのはもう夜も遅かったが、少しでも夜食をと、周と冰の好物を用意して待っていてくれた。また、冰の方も出国まで慌ただしくはあったものの、空港でいくつか土産を見繕ってくるのを忘れなかったので、そんな気遣いにも真田はいたく感激していた。  かくして、それぞれの日常が戻ってきたのだった。  それから週末の連休を挟んで数日が経った後、いつものように出社した冰にうれしい知らせが飛び込んできた。  先日、拉致された現場を目撃し、いち早く李に知らせてくれたという元受付嬢だった矢部清美にお礼の挨拶をしに行こうとした時だ。  一応勤務時間中なので、上司でもある李にひと言断りを入れた冰は、うれしい驚きに瞳を見開くこととなった。何と、清美が営業部から受付嬢へと戻ることに決まったと聞かされたからだ。 「彼女、受付嬢に復帰できたんですか?」  清美を営業部へと飛ばしたのは他ならぬ李だが、今回の機転を買われて受付嬢へ戻すことにしたというのだ。  そもそも彼女が飛ばされたのは、一番最初に冰が社を訪ねて来た際に非常に失礼な応対をしたのを李に目撃されたからだったわけだが、他所の部署に行って彼女の気構えも変わったのだろう。あの頃と比べると、人間的に一回りも二回りも成長したように思えると李が認めたのだ。 「彼女は確かに気も強いところのある性質ですが、社の顔としての誇りは人一倍高い女性です。物怖じせずに悪いと思ったことに立ち向かう姿勢は認めるところではありますし、少しの間ですが営業部へ行って、あの頃にはなかった柔軟さも芽生えたのかと思われます」  しっかりと芯を持ちながら、対人面での当たりの良さも備われば、非常に優秀な受付嬢として社を支えてくれることだろうと、今回の復帰に至ったとのことだった。 「そうだったんですか。良かった! 彼女、受付嬢が夢だったって言ってましたから!」  まるで我が事のように喜ぶ冰の傍らでは、周が少々不思議そうに首を傾げていた。 「なんだ、お前……その受付嬢と親しかったのか?」  周にしてみれば、二人の接点は最初に社を訪ねて来た時の一度きりと思っていたからだ。

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