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恋敵26

「ですから張さん、なるべく詳しくその店のことを教えてください。一番の問題は、お店にプールしてある換金額がどのくらいあるのかということです」  それによっては一度の賭け金や、勝った場合にどのくらい儲けられるのかが変わってくるからだ。 「店の規模としてはそれほど大きいわけじゃないんでね。本格的に潰すならば綿密な計画が必要だが、今回は灸を据えるのが目的だから、そう大掛かりにする必要はないと理事会の意見も一致している。一番いいのは、決定的なイカサマの証拠を掴んで、営業資格を剥奪できるところまで持っていってしまえればいいんだが」  それと同時に、資金面でも打撃をあたえて、懲りずに再構築する余力を絶ってしまえれば尚いいと張は言った。 「今ここで運良く閉店に追い込めても、すぐにまたどこかで闇カジノでもオープンさせられたんじゃイタチごっこだ」 「なるほど。イカサマの現場を押さえて資金源も吸い上げられればいいというわけですね。では、とりあえずイカサマを仕掛けてくるディーラーの技を破って、こちらが大勝ちすることを考えましょう。その為にはお店のやり口を知っておく必要があります。例えば、イカサマが一番酷く行われているのはカードゲームなのかスロットなのかとか、ルーレットならヨーロピアン方式かアメリカン方式のどちらでお客様が負かされることが多いのかなどです。あとはルーレットのホイールの型とかも分かれば有り難いんですが」 「ああ、それなら情報だけは十分に調査済みだよ。ルーレットのホイールはうちのカジノと同じで一昔前のレトロタイプだ。アメリカン方式オンリーで、ベットは客が先だ。賭けが出揃ったところでディーラーがホイールを回すという一般的なやり方だね」  ということは、相手のディーラーは客が賭けていない位置にボールを落とし込む技術を持っているということになる。逆ならば有り難いところだが、これについては少々頭脳戦を強いられると冰は思った。つまり、ディーラーが先にホイールを回してくれれば、その動きから最終的にボールが落ちるだろう位置を予測できるが、賭けた後ではそれが叶わないからだ。  まあ、ディーラーに先にホイールを回させる手段に持ち込む方法は追々考えるとして、とにかくは張の話の続きを聞くことにした。 「イカサマで一番持っていかれやすいのは、やはりポーカーとルーレットのようだ。スロットも酷いと聞いているが、あれは元々の機械操作で絶対に勝てないように細工されているから、キミの神技を発揮するには不向きだろうね」 「分かりました。それだけお聞きできれば十分です」  冰は話を聞きながら、早速にどう勝負するかのシミュレーションを頭の中で繰り広げていった。 「先ずはお店に乗り込んでしばらくは様子を見ましょう。目立たないように適当なテーブルをはしごして、少しずつ元手を作りたいと思います」 「元手か。そんなところまで考えてくれているのか! だが、それならこちらで用意できるぞ。理事会からも援助が出せるだろうし、何なら俺の私財を投じてもいい」  カジノで大勝ちするには、それなりの元手――つまりは賭け金も必要だ。冰は一から稼ぎ出すことを考えているようだが、張としては手伝ってもらう以上、そのくらいは融通したいと思ったようだ。  だが、冰は丁重にそれを辞退した。

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