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極道の姐7

 そうなのだ。隣のビルには周の経営するアイス・カンパニーの子会社が軒を連ねているわけだが、それらの偵察方々必要書類などを届けに回るのが冰の仕事でもある。これまでは彼一人で回ってもらっていたのだが、その帰り道でマカオの張らに拉致されたこともあって、以後は劉と共に二人一組で回らせるようにしたのだった。 「お夕飯は外へ出られますか?」  そうであれば手配をという李の有り難い言葉に、周も瞳を細めた。 「そうだな。この時間ならまだ真田も支度はしていなかろう。今宵は皆で中華でも囲むか。お前らも一緒にどうだ」  中華を食べに行くなら二人きりよりも人数がいた方が楽しめる。何より、そう言えば冰の方から『それだったら李さんや劉さん、それにもしご都合がつけば真田さんたちも』と言い出すに決まっている。自分だけがいい思いをするという観念がない冰は、そうして常に周りの人々を思いやってくれる性質だからだ。 「では有り難くご相伴に与ります。いつもながらのお心遣い、痛み入ります」  李は言うと、早速に店の手配に取り掛かったのだった。  その夜、夕飯から帰ってのことだ。周は念の為、昼間聞いた唐静雨の件について冰の耳にも入れておこうと、リビングで就寝前の酒を片手に彼と向き合っていた。 「今はまだ何か起こるといったわけじゃねえが、ここしばらくはお前も身の回りに気を配るようにしておいてくれ。もっと詳しいことが分かってくるまで辛抱をかけるがすまねえな」  そんなふうに謝ってくる周を目の前に、冰はブンブンと首を横に振りながらうなずいた。 「白龍のせいじゃないんだからさ。そんな謝らないでよ。でも俺も気をつけるようにするね」  いつもこうして気遣いを忘れない。そんな伴侶を愛しく思わずにはいられない周だった。 「よし! じゃあ休むとするか」  酒のグラスを片付けてベッドへと誘う。もうすっかり共に寝るのが通常となっているので、冰も当然のように同じベッドへと向かう。 「明日も朝一からの予定は入ってねえし、割合ゆっくりめだ。この後はまたお前のベッドに移動してもいいし、このままここで寝ちまっても俺は一向に構わねえぞ」  ベッドを移動という言葉に冰は瞬時に頬を赤らめた。つまり抱きたいという意味だからだ。  初めての睦の時、汗や体液でシーツがぐちゃぐちゃになってしまったので、これでは寝づらかろうと冰の部屋のベッドへと二人で移動して就寝についたことがある。それ以来、愛を紡ぐ夜は周のベッドで、その後は冰の部屋へと移動して寝ることがすっかり習慣になってしまっているのだ。まあ、激しい夜には疲れてそのまま寝入ってしまうこともあるのだが、気持ちよく熟睡させてやりたいと、周はいつもそうして気遣ってくれるわけだ。そんな亭主を、冰もまた心から頼もしく愛しく思うのだった。

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