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極道の姐9

 この事業には周の実家である香港の親たちも出資していて、無事に掘り出せればたいへんな収益が見込めることとなる。元々は交通手段に苦を強いられていた山奥に住む地元少数民族の力になろうと道路を通す計画で始めた慈善事情だったのだが、掘り起こす過程で鉱石が見つかったことから、急遽採掘の方にも力を入れることになってしまったのだ。  住民の足となる道路開発の方は当初よりも別のルートが検討されて、そちらの方も順調に進んでおり、完成も近いという。今まで政府も手をつけられずにいた開通事業を支援したお陰か、周ファミリーの周辺では神様の思し召しなどとも言われているほどだった。それでこの度、周らと共に現地の視察に行くことになったのである。 「あそこで掘り出した鉱石の大部分は国と地域住民たちに還元されるそうだが、開発事業に携わったとして一部は周ファミリーの伝手で加工全般が行われた後、氷川の社を通して各国へ流通されることになっている。うちは単に開発資金を援助しただけだが、製品となった宝飾品を捌く手伝いくらいはできるからな。それ相当なバックまで入れてくれるとのことだし、少しは売り上げに貢献しねえとと思っている」 「はぁ、儲け話かよ。お前と氷川も相変わらずやり手だよな」 「それも事業の一環だ。組を運営していくには資金源は必要不可欠だからな」 「まあな。俺なんかシノギのことに関しちゃお前に任せっきりだからさ。ちっとは役に立たなきゃって思ってはいるんだけどな」  姐という立場で組のことは亭主と共に背負っているつもりでも、実際に金を生み出すことにはあまり力になれていないと、少々情けなさそうに肩を落とす紫月の傍らで、鐘崎は愛しそうに瞳を細めた。 「お前はいいんだよ。傍に居てくれるだけで俺の精神面を支えてくれているんだ。組の若い衆らだって同様だ。お前は俺たち皆の活動源なんだからな」  至極真面目な顔つきでそんなふうに言われて、紫月は苦笑しつつもペロリと舌を出して頭を掻いた。 「は、ホント俺って幸せ者だよな」 「それを言うなら俺の方だ。お前がいてくれるから俺は安心して儲け話にも専念できるんだからな」 「バッカ、遼……」 「それより今度の旅は少し長くなるぞ。半月は向こうに行っている予定だ。俺と氷川は採掘場の視察や開通した道路関係者への挨拶回りなんかで連日出て歩くことになると思う。あっちは山岳地帯だ。朝晩で気候の変動も大きいらしいし、着るモンなんかの準備をしといてくれ」 「ああ、うん。そりゃもちろん!」

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