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極道の姐27
『だが、俺は一度たりとお前の女にちょっかい掛けたりした覚えはねえぜ? 仮に横恋慕したというなら謝りもするが、そんなことはしちゃいねえ。それで恨まれんのは筋違いってもんじゃねえか?』
風が正論でそう返したが、男の方は当時のことを思い出して火が点いてしまったわけか、腹立ちは募るばかりのようだった。
『……ッ、まあいい。あれからもう十年以上も経ってんだ。俺もすっかりその頃のことを忘れちゃいたが、静雨に会って思い出したってわけだ。あの女が恨んでる男がてめえの弟だと知った時の俺の気持ちといったら……てめえにゃ分からねえだろうぜ! まさに運命としか思えなかった。だから今回の企てに乗ったんだ。静雨と共にてめえら兄弟に恨みを晴らしてやろうじゃねえかってな!』
とにかく目的は分かった。このロンという男と唐静雨の逆恨みによる復讐というわけだ。
『で、お前らは俺と弟をどうしようってんだ』
風が訊くと、周が続けてこう訊いた。
『それもだが、俺らと一緒にいたもう一人はどうした。お前らの目的が俺たち兄弟であるなら、あいつは関係ねえはずだろうが。姿が見当たらねえが、ヤツは今どうしてる』
周が聞きたいのは鐘崎のことである。この部屋にいないということは、彼だけ別の場所に拘束されているだろうからだ。すると、ロンからは更に驚くべきことが告げられた。
『ああ、あの野郎な。あいつは今、この対面の部屋に放り込んである。静雨と一緒に休んでる女が目覚めたら、あいつの相手はその女が好きにするだろうさ』
『女だと? 唐静雨の他にもまだ別の女が絡んでるってわけか?』
周が訊くと、ロンは得意げにこう言った。
『お前らの周辺を調べてる最中に偶然知り合った女でな、銀座のクラブに勤めてるサリーとかいったな。こんな言い方をしたら悪いが、静雨とは比べ物にならねえくらいのめちゃくちゃイイ女だぜ? サリーの方はあの野郎に用があるらしく、今回の計画に加わりてえって言うから仲間に入れてやったんだ』
周は思わず眉をしかめた。
鐘崎も相当な男前であるのは確かだし、彼に言い寄ってくる女がいたとて驚きはしないが、わざわざこんな拉致計画にまで便乗したいというからには、単に好いた惚れたというだけではなさそうである。鐘崎本人からも特には女関係で憂いごとを抱えているとは聞いていなかった周は、むろんのことサリーというホステスが鐘崎にしつこく後見を迫っていることも知らなかった。
『カネのヤツも鬱陶しい厄介事を抱えてたってわけか』
とにかくはこの拉致に関してだんだんに詳細が明らかになってきた。
『それで? もう一度訊くが、お前らは俺たちをどうしたいってわけだ』
周が訊くと、ロンは勝ち誇ったような下卑た笑いと共に懐から物騒な物をちらつかせてみせた。
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