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極道の姐36

「いいわ。じゃあ一緒に焔に報復してやりましょう! 今のあなたの話を聞いて、まさか焔がそこまで最低だったなんて驚いたけど……。正直なところ、アタシは例の横領金程度で済んで幸いだったのかも知れないって思ったわ。あんな男はこの世から葬ってやるのが後々の為よね! 生かしておいたらこの先もアタシやあなたのように泣きを見る人間が何人出るか分からないもの。そんな悲惨な女性たちを出さない為にも二人であの男を地獄に送ってやりましょう!」  静雨は意気込んでそう言うと共に、気の触れたような高笑いをしてみせた。そして、満足するまで周兄弟を甚った後に彼らに銃で相討ちさせる計画を誇らしげに話して聞かせた。 「拳銃はこのロンが用意してくれているわ。これであの兄弟に撃ち合いをさせるのよ」  やはり先程集音器で聞いた通りの手順を実行するつもりらしい。既に彼女らの計画は承知だったが、冰は薄らっとぼけて聞き返した。 「撃ち合いだ?」 「そうよ。あんな男の為にアタシたちが手を汚す必要はないもの! そうは思わない?」 「ふぅん? まあ一理あるけどな。で、拳銃ってのは? 疑うわけじゃねえが、マトモに使い物になる代物なんだろうな?」  今度はその拳銃を見せろと顎をしゃくってみせる。撃ち合いをさせると聞かされても顔色ひとつ変えない冰の様子に、本当に周を恨んでいることが窺えるわけか、はたまたそれと同時に相当場慣れしていると感じた様子のロンが自慢げに二丁の銃を差し出してみせた。 「ほら、見てくれ! あんたもマフィアだって話だが、俺だってニューヨークじゃ名のある組織の一員だったんだ。足の付かねえ銃を手に入れるくらい朝飯前さ!」  密かに自分の立場も大したものなのだと自慢したいのだろう。だが、冰は差し出された銃を目にするなり鼻で笑ってみせた。 「は――、トカレフかよ。悪いがそんなモンじゃ俺の気は到底収まらないね!」  言うと同時に懐から鈍色に光るずっしりとした代物をチラつかせては舌舐めずりをしてみせた。 「ゲッ……! ま、まさかそれ……! マ、マグナム……っスか?」  あまりの驚きにロンがひっくり返ったような声を上げた。言葉じりも敬語になっているところが笑えるが、当の本人はまったく気がついていないようだ。つまり、それほど驚いたということなのだろう。 「そ! コルトパイソン・マグナム、俺の爺さんのそのまた爺さんだっけかな。とにかく代々我が家に受け継がれている愛用の銃さ。撃ち合いなんてチンケなことはさせやしねえ。こちとら捨てられただけじゃねんだ! 莫大な金まで持ち逃げされたんだぞ! 周焔から全額取り返して、俺がこの手で仕留めなきゃ腹の虫が収まらねえ!」  ガゴッという独特な音と共に撃鉄をチラつかせ、ギラギラと剣を伴った瞳を瞬かせる。そんな様子に更に尻込んだのか、ロンも静雨も冰のただ者ではない雰囲気に冷や汗を伴ったような苦笑を浮かべている。そして、それは張やボスの男らにとっても同様だったようだ。

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