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極道の姐68
圧を伴った周のオーラにロンは縮こまってしまうしで、そんな雰囲気に視線を泳がせながらも冰は激励の言葉を口にした。
「と、とにかく……採掘のおしごと、ご足労をおかけしますがよろしくお願いします。あの……ロンさん、お身体にだけはどうぞお気をつけてお過ごしくださいね」
冰にあたたかい言葉をかけられて、ロンは驚きつつも目一杯頭を下げて元気のいい返事をした。
「姐さん……あんたって人は……ホントに……。俺、頑張ります! 姐さんのお気持ちを無駄にしねえように精一杯やりますんで! 姐さんもお身体大切にして、ご主人と末永くお幸せでいてください!」
感激で胸が熱くなってしまったのだろうか、照れ笑いでごまかしながらも目頭を押さえて作業に戻っていく後ろ姿を周と共に見送った冰であった。
◇ ◇ ◇
それからひと月余りが過ぎた頃、街はクリスマスのイルミネーションが華やかに彩りを見せる季節である。
夜の銀座にも木々の装飾が煌めき、恋人たちが楽しげに行き交う並木通りの外れに、ひとつの店が華やかにオープンしようとしていた。サリーこと佐々木里恵子がオーナーママとして開いたクラブである。
あの後、すっかりと心を入れ替え、古巣であるクラブ・ジュエラの君江ママにもこれまで世話になった礼と共に正式な挨拶の儀式を執り行ったサリーは、皆に祝福される形で開店へと漕ぎ着けたのであった。
オープン初日の今宵は、店の前の通りにまであふれんばかりの祝い花が並び、幸先の良さを感じさせる華やかなスタートとなった。そんな中、一等目立つところに鐘崎僚一と鐘崎遼二の名で大きな祝花のスタンドが添えられ、その隣にはジュエラの君江ママからも豪華な花が寄せられた。皆の厚情にサリーは大感激し、厚く礼を述べたのだった。
「サリーちゃん! 開店おめでとう!」
花とは別に分厚い祝儀を携えて、ビシッと決めた正装姿で祝いに駆け付けた鐘崎親子と紫月の姿に、サリーは両手放しで喜んだ。
「紫月ちゃん! 僚一さんと遼二もありがとうございます! こんなに立派なお花まで出していただいて……アタシ、本当に何て言っていいか……何よりのお祝いを本当にありがとうございます!」
真っ新な着物に身を包んだサリーがハンカチで眼頭を押さえながら感激の面持ちで迎え入れる。ホステス時代も華があったが、こうしてシックな着物姿もまた一段と艶やかだ。僚一がエスコートしてきた君江ママからも厚い祝儀と心からの言葉をかけられて、せっかくの華やかな化粧が台無しというくらいサリーは嬉し涙がとめられずにいた。
「サリー……じゃなかった! これからは里恵子ママって呼ばなきゃだな!」
紫月に言われて、ようやくと笑顔が戻ってくる。
「いいのよー紫月ちゃん、サリーのままで!」
「んー、でも里恵子ママっていうのも粋じゃん! 今の着物姿にゃ、やっぱこっちの方がしっくりくるしさ! でもって店の名前がクラブ・フォレストなんだな!」
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