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極道の姐71

 森崎は鐘崎や紫月らと同年代だが、ほんの少し歳下でもある。それ以前に、裏の世界でいう立場的には圧倒的に下であるのは確かだ。森崎からしてみれば、鐘崎組といえば実力も何もかもが優っている雲の上のような存在である。そこの長である僚一から夢のような誘いを受けたこと自体が恐縮などという問題ではないわけだ。  いつまでも首を垂れたまま微動だにできずにいる彼に、鐘崎からも微笑ましい言葉が飛び出した。 「親父の言う通りだ。これからは互いに凌ぎ合い、助け合っていきてえ。よろしく頼む」  やわらかな笑みと共に有り難い言葉を掛けられて、森崎の胸に思わず熱いものがこみ上げる。 「ありがとうございます……! 手前などにそのようなご厚情……。不束なならず者でございますが、どうぞ今後ともよろしくご指導ください!」  森崎瑛二は心からの感激を胸に、厚く礼を述べると共に真摯に頭を下げたのだった。  ――と、そこへまた黒服が客人を連れてやって来た。 「氷川! 冰君も!」  紫月が嬉しい叫び声を上げて立ち上がる。なんとそこには祝い用の洒落た花籠を手にした冰と、彼をエスコートするように肩先に手を添えた周が正装姿で立っていたのだ。 「冰がな、こういった店は初めてだというんで祝いがてら邪魔させてもらった」 「そうだったのか! 冰君ー、ご一緒できて嬉しいぜ!」  紫月がすかさず席を詰めて二人の為に場所を譲る。あっという間に楕円形の長いソファが満員になって、正装姿の男たちで華やかに埋め尽くされたのだった。 「里恵子ママさん、開店おめでとうございます。これ、心ばかりですが……」  冰が手にしていた祝い花のバスケットを里恵子へと差し出す。周からは分厚い祝儀袋が手渡されて、里恵子はまたしても涙を誘われてしまった。 「冰ちゃん、それに周焔さんもありがとうございます!」 「いい店だな。シックで落ち着いた雰囲気でホッとできる」  周が褒め言葉を口にすると、里恵子も嬉しそうに涙を拭った。 「カネも親父さんもいることだし、俺がでしゃばらずともよさそうだが、ささやかな祝いの気持ちだ。乾杯のシャンパンくらい持たせてくれ」  周がそう言うので、一同は厚意に甘えることにした。  豪華なフルーツ盛りと共に艶やかなラベルの高級シャンパンが運ばれてくる。 「うわぁ、綺麗……! 果物のタワーだぁ!」  冰が物珍しそうに感嘆の声を上げている。 「里恵子ママがな、フルーツの仕入れ先を俺の社が卸している店と契約してくれたんだ」 「氷川の社が卸してるっていうと、例の老舗果物店か! すっげ、豪華じゃん!」

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