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チェインジング・ダーリン3

 その頃、何も知らない紫月の方は、ちょうどロビーで周焔と落ち合ったところだった。 「おーい、氷川! こっちこっち!」  開店前の内覧会とあってクラシカルなダークスーツに身を包んだ周が一人でこちらに向かいながら軽く手を上げている。 「あれ? お前一人か? 冰君は?」 「ああ、駐車場の入り口で偶然クラブ・フォレストの里恵子に会ってな。森崎っていう旦那の方も一緒だったが、あいつらも招待されてるってんで、冰と三人で先に会場に行かせたんだ。お前こそカネの奴はどうした」  ここの駐車場は近隣の商業施設などと共用らしいので、週末ということもあって少々混んでいたらしい。紫月らを待たせてはいけないと思い、周が残って冰を先に行かせたわけだ。 「何だ、まさかお前が運転してきたってわけ?」  いつもならば移動は専任の運転手付き高級車のはずなので、紫月が首を傾げている。 「ああ。たまの休日だ。場所も近えし、内覧会が終わる時間も読めんからな。運転手を煩わせることもねえ。それに冰を俺の助手席に乗せるのもオツだと思ってな」 「ふぅん、そうだったんか」 「で、そっちは? カネの奴は厠へでも行ってんのか?」 「いや、さっきここへ来るなり支配人に捕まっちまってさ。なんでも急な相談がどうとか言ってたけど」 「急な相談だ? 仕事絡みなのか?」 「さあ、そこまではなんとも。あいつとは会場で待ち合わせてっから、俺らもそろそろ行こうぜ」  そんな話をしていると、クラブ・フォレストのママである里恵子が颯爽としたスタイルで手を振りながら近付いてきた。 「わ……! 里恵子ママか!? 今日はまためちゃくちゃ粋じゃん! 誰かと思った」  紫月が驚きに目を剥いている。それもそのはずだ。クラブではシックな和服姿の彼女が、今日はなんと上下ピッタリとした革のパンツスーツに身を包んで、まるでライダーのような出立ちだったからである。 「うふふ、驚いた? 実は瑛二もアタシもツーリングが趣味なのよ。この後、軽く走りに行こうかっていうことでこの格好で来たの。今日はお天気もいいし、近場だけど横浜あたりまでね」 「うっは、マジで? すげえ似合ってる!」 「ほんと? ありがとう紫月ちゃん!」 「それはそうと、あんたの旦那と冰はどうした。一緒じゃなかったのか?」  駐車場から三人で会場へ向かわせたはずなのに、彼女一人だけなので周がそう訊いたのだ。 「ええ、アタシはちょっと化粧室に寄ったんで、冰ちゃんと瑛二には先に行ってもらったの」 「そうか……。あいつ、招待状を持ってねえがちゃんと入れたのか?」  周が自分と冰の分の招待状を懐から取り出しながらブツブツと呟いている。

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