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チェインジング・ダーリン13
「どうも、ご無沙汰しております。日頃はうちの社員たちがお世話に与りまして」
軽く会釈と共ににこやかな表情で話し掛ける。すると、森崎の方もそれに合わせるかのように、『こちらこそお世話になっております』と頭を下げ、側にいた冰もそれに倣うようにペコリとお辞儀をしてみせた。側から見れば企業人同士の挨拶にしか映らないだろう。
しばしたわいのない世間話を交えた後、ウェイターたちに背を向けるよう展示物に興味を示すふりをしながら、鐘崎は小声で二人に真相を告げた。
「手短に言う。今日この会場でテロ的なことが起こる確率が高いことが分かった。料理のサーバーをしているウェイター集団がおそらく犯人一味と思われる。何が起こっても慌てずに俺の側から離れるな」
森崎も冰も驚いたように瞳を見開きながらも、表面上は朗らかな態度を装ってくれている。さすがにこの世界に生きる者同士である。
「俺たちが裏の世界の人間だとバレるのはまずい。要らぬ抗争に発展するのは避けたい。あくまでも普通の招待客を装ってくれ。それから、何か事が起これば携帯は没収されるだろうから、今の内に知られて困る情報は削除してくれ」
「承知しました」
「今ならばトイレへ行くふりをしてここを出られる。入り口まで付き添うから、冰はロビーに出て氷川と落ち合え」
「分かりました。でも……鐘崎さんは……?」
「俺は万が一を考えてここへ残る。既にこの会場内には三十人を超える客が入っている。現段階で怪しまれずに全員を場外へうながすのは無理だ」
鐘崎がそう言うと、森崎も一緒に残って役に立ちたいと申し出てくれた。
「よし、じゃあ冰。トイレに行きたいと――」
言え――そう言い掛けたと同時に爆音が響き、建物内が大きく揺れて一気に照明が落ちた。
場内の至るところで悲鳴が上がり、瞬く間に上へ下への大混乱と化す――。
「……ッ! 遅かったか! 冰、俺の側を離れるな!」
「は、はい……」
森崎と共に冰を囲むようにして身を寄せる。
「爆発音は地下からのようだな。とすると電気室か……」
先程事務所で見た館内の見取り図を思い浮かべて鐘崎が現状を思い巡らせる。すると、やはりかウェイターの一団が大声を張り上げて客たちを制し始めたのが分かった。それと同時に入口の扉が閉められる音も確認できる。
「人質をとって立て篭もるつもりでしょうか?」
森崎が周囲に気を配りながら小声で訊く。
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