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チェインジング・ダーリン24

 鐘崎の組では以前から警察上層部との付き合いも深い。この男もその内の一人というわけだ。 「だが、さすがに鐘崎組だな。俺たち警察よりも早く事態を察して、このバスを追跡する手筈も早急に整えちまった。ヘリは源次郎氏か?」 「ああ。親父はまた海外だからな」 「やはりそうか。これだけの大事件の割には僚一さんの姿が見えないと思っていたが。それに今回の犯人たちの本当の目的の方、臨海倉庫から盗み出された原石も無事に鐘崎組が取り返して実行犯を押さえてくれたというし、お前にはますます頭が上がらなくなったな。二手に分かれて犯行を食い止めてくれた手腕は見事という他ない」 「俺だけの采配じゃねえさ。仲間がいなかったら到底解決には至らなかった」  そう言った鐘崎に、男はむろん心得ているといったふうにうなずき、周や紫月らへと視線をやった。 「そちらは鐘崎の御令室と――周焔氏だな」  男はどうやら周のことも知っているふうな口ぶりである。  周にとっては初対面の上、この男との繋がりなどはない。何故こちらの正体を知っているのかと怪訝そうな周に微苦笑を浮かべると、男は言った。 「香港の周隼の次男坊がこの日本で起業していることくらい情報は持っているさ。これでも一応警視庁なんでな」  男は笑うと、周や鐘崎ら一同に向かって改めて姿勢を正してみせた。 「警視庁捜査一課課長の丹羽修司(にわ しゅうじ)だ。今回は本当に世話になった」  ビシっと背筋を伸ばして敬礼する。 「本来であれば警視庁を挙げての表彰に値する活躍だが、感謝の意を形にして届けられないことを許して欲しい」  つまりは鐘崎や周らによって事件が解決できたことは世間に伏せられるという意味だった。その代わり、銃刀法違反などの罪にも問わないという暗黙の了解である。  人質となった人々や鐘崎らの素性を知らない者たちには、解決に当たった鐘崎らは警察関係者であり、偶然にもその場に居合わせたということで通すということらしかった。電光石火の如くの手柄も丹羽(にわ)ら警察にすべて持っていかれるが、鐘崎や周ら極道の世界にも口出しはしないという意である。  丹羽修司と名乗った男はすまないという気持ちを伏し目に代えると、今一度ビシッと姿勢を正して感謝の意を表してみせた。 「では鐘崎、いずれまたプライベートでゆっくりやろう。良ければご友人方もご一緒にな」  クイと盃を傾ける仕草と共に微笑むと、彼を待つ部下たちの元へと戻って行った。 「驚れえたな、日本の警察にもあんなヤツがいたとはな」  周が珍しくも目を丸くしている。そんな様子に鐘崎もやれやれと苦笑を返した。 「ヤツとは親父の代からの付き合いでな。型破りで変わったところもあるが、悪いヤツじゃねえ」

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