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チェインジング・ダーリン29

「うははー! 最高じゃね? だったらさ、今年のクリスマスはウチでケーキを作るってのはどうだ? 今までずーっと遼がケーキを選んでくれてて、それは超楽しみなんだけどさ。たまには感謝の気持ちを込めて俺らが手作りすんの! 料理の方は板さんがいるから任せるとして、俺と冰君でケーキだけ焼くってのは?」 「わぁ! いいですね! それだったら俺、作りたいケーキがあります!」  早速に嫁同士で盛り上がっている。 「作りたいケーキってどんなの?」 「えっとですね、ケーキの上に龍の模様をチョコレートとかで描いてみたいかなって。紫月さんの好きな例のケーキのお店に行く度に思ってたんですよ。そんな感じのケーキがあったらいいのになって」  モジモジと冰が頬を赤らめながら言うと紫月が破顔するほどの笑みを見せた。 「うっは! それって”白龍”じゃん! さすが冰君、愛があふれてんなぁ!」 「い、いえ……そういうわけじゃ……まあ……ないわけじゃ……ないですけど」  こんなに可愛いことを言われて黙っていられるわけもない。 「冰――お前ってヤツは……毎度のことだがどこまで俺を喜ばせるんだ!」  周はガラにもなく仔犬のようにウルウルと瞳を輝かせながら、またもや冰を抱き締めてしまった。 「俺は正直その気持ちを聞けただけで感無量だが、お前の手作りなら実際に食ってみてえと思っちまう。今からめちゃくちゃ楽しみだ!」 「白龍……あんまり上手く作れないかも知れないけど、でも心を込めて作るよ!」 「ああ。いい、いい! お前が例の店でそんなことを考えてくれてたってのを知っただけで感無量だ!」 「うっは! ラブラブじゃん! 遼、お前は甘いモン苦手だからケーキ焼いても嬉しくねえかもだけど、見た目だけでも楽しんでもらえるようなの考えるからさ!」 「いや、俺もお前が焼くケーキなら完食する自信はあるぞ」  すっかりカップル同士で盛り上がっている様子に、森崎も里恵子も肩を寄せ合いながら微笑ましく見つめるのだった。 「ホント、あなたたちって仲良いのよねぇ! 見てるこっちが照れちゃうじゃないの!」 「俺も……正直鐘崎さんや周さんのこんな姿を拝めるなんて思ってなかったっていうか……めちゃくちゃレアで感動してます!」 「そうよね! 普段はこわーい極道とは思えないわ」  里恵子がチャーミングなウィンクで場を盛り上げる。 「よし、それじゃパーティーの方は今年は汐留でするか! ケーキは冰と一之宮に任せるとして、料理の方は真田が何か考えてくれるだろう」 「うっはぁ! いいねいいね!」 「森崎と里恵子も都合が合えば是非来てくれ。ああ、でも里恵子のところは店でクリスマスパーティーがあるんだっけな?」 「ううん、それならお店のパーティーの日を繰り上げてイブイブあたりにずらすわ! だって周家と鐘崎家のクリスマスパーティーなんて何が何でも参加したいじゃない!」  里恵子が胸前で手を組んでワクワクと頬を紅潮させる。森崎も同様に『俺もそれまでに仕事を片付けて絶対参加させてもらいたい!』と意気込みをみせた。  緊迫で始まった一日だったが無事に事件も解決し、それぞれの夫婦間と仲間同士の絆も確固たるものとなった。大団円といえる結果に、朗らかな笑い声に包まれながら帰路に着いた極道たちであった。 チェインジング・ダーリン - FIN -

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