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極道たちのクリスマスパーティー1

 年の瀬も近付き、クリスマスイブを明日に控えたその日。鐘崎組の厨房では紫月と冰が朝からケーキ作りに精を出していた。 「材料は昨日冰君と仕入れて来たし準備は万端だ! まずはケーキの土台作りから始めようぜ!」 「はい、よろしくお願いします! 俺はケーキを焼くなんて初めてなので……お世話を掛けてしまうと思いますが」 「ンなの全然! 材料混ぜて焼くだけだし簡単さ! 手間掛かるのはデコレーションの方だな。冰君の方は土台に龍の模様を付けたいんだったよな?」 「はい、そうです。白龍の背中の彫り物と似たような模様にしたいと思ってこれを作ってみました」  冰は持参してきた袋から大きな型紙を取り出してみせた。 「うっはぁ! すっげ! マジでこれ切り抜いたんか!?」  冰が広げた型紙には昇龍の形が細部に至るまで一つ一つ丁寧にカットされたものだった。 「最初はチョコレートか何かでケーキの上に描き付けていこうと思ってたんですけど、紫月さんのアイデアで型紙を作ってパウダーシュガーを振り掛けるといいってうかがったので、頑張って切り抜いてみました!」  そうなのだ。チョコレートで線を描いていくよりも綺麗に仕上がるのではないかと紫月が提案したのは本当なのだが、まさかここまで細かく型紙を切り抜いてくるとは思いもしなかったので、非常に驚かされたというところだった。 「いやぁ……それにしてもすげえ細かさだ。これってケーキの模様ってよりは芸術品じゃねえの! 氷川への大いなる愛を感じるなぁ!」  紫月が型紙を眺めながら感心しきりである。鐘崎組の厨房を預かる調理師たちも感嘆の溜め息を上げては冰を取り囲んでひとしきり展覧会的なひと時と相成ったのだった。 「――にしても、こんだけ切り抜くの大変だっただろう? すげえ時間掛かったんじゃねえ?」 「ええ。例の事件の後すぐに始めたから二週間くらいかな。社の方の仕事は白龍より俺の方が早く上がれたりするので、部屋に帰ってから毎日ちょっとずつですけど。でも真田さんも毎日見に来てくださってお茶を淹れてくれたり、応援してくださったんで何とか形になってよかったです!」 「ふあぁ……ホントよく頑張ったよなぁ。これ、氷川にはもう見せた?」 「いえ、まだです。ケーキが完成してから見せたいと思って。ケーキ用に白龍の背中の模様を写真に撮らせてもらったんで、俺が何か作ってるんだーってことは知っていたと思いますけど、実物は見せていないので」  照れたようにして冰がはにかんでいる。その色白の頬に真冬の陽射しが暖かに照らし、彼の陶器のような肌をより一層際立たせていた。 「氷川は幸せ者だなぁ!」  紫月に言われて更に頬を染め上げた冰であった。 「よっしゃ! そんじゃ、これをいっちゃん生かせるよう土台の方に取り掛かるとするか! でっけえケーキを焼かなくちゃな」 「はい! がんばりますんでよろしくお願いします!」  組の調理師たちも器具の準備などを手伝って、賑やかなケーキ作りが幕を開けたのだった。

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