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極道たちのクリスマスパーティー3
まるで披露宴会場のような広々としたルームの真ん中に大きなもみの木が置かれ、その周囲を取り囲むようにクリスマスカラーの布地で彩られた円卓が並ぶ。演舞曲が心地の好いメロディーを奏でる中、高い天井からは幾千ものクリスタルガラスがキラキラと輝くシャンデリアが美しく卓上のカトラリーを照らしている。前菜からメインまで本格的なフレンチのフルコースが振る舞われ、料理のサーバーは黒の執事服をビシッと纏った真田たちが卒なくこなして、まるで夢と御伽の世界の如く豪華な宴に紫月の父や綾乃木などは目を剥いてしまったほどだった。
大パノラマの窓の外には、暮れるのが早い師走の宵闇が眼下の大都会のネオンを包み込み、宝石箱のように煌めいて非常に美しい。まさに絶景の中で最高の仲間と家族と共に賑やかなクリスマスの食卓に花が咲いていった。
そうして絶品のフルコース料理に舌鼓した後はいよいよデザートの登場である。昨日、鐘崎邸で紫月と冰が腕によりをかけたクリスマスケーキが大きな銀製の蓋で大切そうに包まれながらワゴンに乗って運ばれてきた。むろんのことワゴンを引いてやって来たのは真田である。
「では皆様、本日のメインでございます。紫月さんと冰さんが心を込めてお作りになられたクリスマスケーキです!」
その掛け声と共に室内の照明が落とされて、スポットが当てられる。と同時にバックミュージックがクリスマスソングへと切り替わった。
得意げな仕草で背筋をピンと伸ばした真田が銀の蓋を取ると、中からはチョコレートクリームとブルーベリーの実で飾られたムース仕様という二種類のケーキが華やかなスポットの中に浮かび上がった。
チョコレートの方は冰である。丸い大きなスポンジ台をチョコ生クリームが覆っているシンプルなもので、それ以外には特に飾りなどはないが、台の上には白いパウダーで繊細な”白龍”の文様が見事に表現されている。冰が約半月ほどかけて毎晩切り抜いた型紙の龍である。
大きなスポンジの上をうねるように雄々しい龍が舞い踊り、その鱗の部分にはスライスした旬の苺が所々に飾られていて非常に美しいそれは、周の名の焔をイメージして冰が赤い苺を添えたのだそうだ。
そして、もうひとつは紫月が鐘崎の為にと試行錯誤したブルーベリームースのケーキである。甘いものが苦手な彼を思ってフルーツの酸味を効かせた台の上に生のブルーベリーが飾り付けてある。紫月曰く鐘崎のイメージであるブラックダイヤに見立てたのだという。それらを目にした瞬間、ボールルーム内は感嘆のどよめきに包まれた。
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