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極道たちのクリスマスパーティー9

「――デカくなったな」 「だよね! 今から十年前っていうと、その頃の白龍は今の俺とほぼ同じくらいの歳だったんだもんね? 一人で一から立ち上げてこんなに大きな会社にしたんだもん! 本当にすごいよ」  嬉しいことを言ってくれる冰には悪いが、周としては彼の言うような意味で言ったわけではなく、クスっと笑みを誘われてしまった。 「俺が言ったのはお前のことだ」 「え……? 俺?」 「確かに社もデカくなったには違いねえが、そうじゃなくてあの頃――まだガキだったお前が立派な青年になったと言ったんだ」 「白龍……」 「お前は知らねえだろうが、俺は香港を離れる前の日に黄のじいさんとお前が住んでいたアパートを訪ねたんだ。日本に来ちまったらそうそう会うことも叶わなくなると思ってな」  あの日の少し切ない思いは、周にとって忘れられない記憶のひとつなのだ。確かにあの頃は冰に対して今のような恋愛感情があったかどうかは定かでない。ただ、幼い彼を置いて遠い地に向かうことがひどく切なかったことだけは強烈に印象に残っているのだ。 「できることなら香港を離れたくはねえ。何もわざわざ遠い異国に行かずとも、お前や黄のじいさんのいる香港の地で起業すりゃいいじゃねえかと何度自問自答したか知れねえ。だが、それじゃ自分を甘やかしちまうことになる。男としてそれじゃいけねえと気持ちを奮い立たせて香港を後にしたあの日の気持ちは未だに忘れられねえと思ってな」  ゆるりと愛しげに冰の髪を漉きながら瞳を細める。 「白龍……」 「だがそれから八年経ってお前から俺を訪ねてくれた。言葉では言い表せねえくらい嬉しかった。心が躍るという言葉があるが、まさにそんな気分だったなと思ってな。それから一年、こうしてお前と共にいられることが夢のようだ」  冰がツリーを眺めながら一年前のクリスマスのことを思い返して感慨に耽っていたように、周もまた、二人が出会ってからのことを走馬灯のように思い巡らせていたのだ。共に同じことを考え、同じように互いを想い、今の幸せを噛み締めているのだと知って、冰は思わず熱くなってしまった目頭を押さえた。 「白龍……俺、俺知ってる。白龍があの日、じいちゃんのアパートを訪ねてくれたこと。学校から帰って来てすぐにじいちゃんから聞いたんだ。漆黒のお兄さんが会いに来てくれたんだぞって。すぐにアパートの下まで降りて追い掛けたけど、その時はもう白龍はいなくなっててさ……。一目でいいから会いたかったって思って……すごく寂しくて……苦しくなったのをよく覚えてるよ」

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