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極道たちのクリスマスパーティー10
「冰……お前……」
「そっか。あの時、白龍もそんなふうに思っててくれたんだね」
堪え切れずにポロリと頬を伝わった涙がツリーを彩るイルミネーションに照らされて、宝石のようにこぼれて落ちた。それをそっと指で拭ってやりながら、周もまたあふれる愛しさのまま自らの腕の中に華奢な身体を引き寄せた。
「二度と……もう二度とそんな淋しい思いはさせやしねえ。ずっと……死ぬまでずっと離しゃしねえ! 俺の側にいろよ、冰……!」
「ん、うん! ずっと……ずっと一緒にいたい! もう絶対……離さないで……」
「ああ。ああ、約束する。神かけて誓うぜ」
「白龍……!」
冰はほんのりと湯上がりの香りが漂う大きな胸に抱き締められながら、ふと思い出したように瞳を瞬かせた。
「そうだ! 俺、白龍に渡したいものがあるんだった!」
「渡したいものだ?」
急に慌ただしげに腕の中でモゾモゾ動く冰を見つめながら、周は首を傾げた。
「部屋へ戻ろう、白龍! ちょっと待ってて!」
冰は自室へと向かうと、しばらくしてパタパタとスリッパの音を立てながら戻って来た。その手には華やかな包装紙が目を引く箱を抱えている。一目でクリスマス用のギフトだと分かるような代物だった。
「あのね、これ……。何にしようかすごく迷ったんだけどさ。白龍、何でも持ってるからこんなのでいいのかなとも思ったんだけど。俺からのクリスマスプレゼント」
遠慮がちに頬を染めながら包みを差し出してみせた。
「俺に――か?」
思いもかけなかったサプライズに、周はひどく驚いたのだろう。普段は鋭い眼光をまん丸に見開きながら唖然としている。
「そ、そんなに大したものじゃないんだ。ただ、先月の白龍の誕生日もちゃんとお祝いできなかったし、本当に気持ちばかりなんだけど……」
そうなのだ。ちょうど誕生日の頃は鉱山の視察に出掛けていて、たいへんな拉致事件に遭った頃である。忙しない中で祝い事どころではない内に過ぎてしまい、冰としては気になっていたわけだ。
周はそれこそ言い表しようのないような感激の面持ちで、プレゼントの包みをじっと見つめてしまった。
「開けてもいいか?」
「うん、もちろん。でもあんまり期待しないでね……」
「あんなすげえケーキや型紙を作ってくれた他にも――こんな気を遣いやがって」
そう言いながらも声がわずか感激に震えている。丁寧にリボンを解き、包装紙を破らないように広げると、中からは渋い色合いのマフラーが出てきて思わず瞳を見開いた。
「すげえ手触りがいいな。カシミアか」
「う、うん……そうだって。お店の人がそう言ってた。薄めだけど首に当てると暖かいんですよって」
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