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孤高のマフィア18

 そんな様子を不安そうに見やりながらも、香山自身は男の言葉に半ば興味津々のようだ。 「それで、その……売り渡すっていうのは……どういうことですか?」  逸り顔の香山を腹の中でせせら笑いながら、男は席を立ち上がると更に店の奥へと案内した。 「ど、何処へ行くんですか……?」 「ンなツラすんなって! なぁに、ちょいと俺の副業を見せてやるだけさ。アンタとはこれから手を組んで一勝負に乗り出そうってんだ。俺がデマカセを言ってねえって証拠を見せといてやろうと思ってな」 「はぁ……」  連れて行かれたのは狭い路地を数十メートル歩いた先にある別の店屋だった。そこも見たところバーのような造りではあったが、厳重に管理されたふうな分厚い扉二枚を挟んだ先に驚くような光景が広がっていて、香山は思わず息を呑んだ。なんとそこは闇カジノの賭博場だったのだ。 「ここはウチの組が秘密裏に運営している闇カジノでな。大陸が近いからそっちのマフィア連中も出入りしてるんだ。ヤツらに言って香港かマカオ辺りの裏社会にそのガキを売り飛ばしちまえば跡がつかねえ。ガキが消えたとなりゃ捜索願いくれえは出されるだろうが、異国のマフィアに渡しちまえばどんなに捜しても簡単には行方が掴めねえだろうさ」 「はぁ……そんなことをして本当に大丈夫なんでしょうか? それに……ゆ、誘拐なんかしたら氷川さんが怒るんじゃないかと……」  香山にとって冰の存在が邪魔なのは確かだが、好いた男に機嫌を損ねられては元も子もないといったところか。 「心配するこたぁねえさ。聞くところによるとその氷川ってのとガキンチョとはえらく歳も離れてるっていうじゃねえか。どうせヤるだけが目当ての遊びに決まってらぁな。その内に氷川って野郎もガキのことなんざ忘れちまうだろうぜ」  若い男を伴侶だなどと言って側にはべらせているような男なら、少し時間が経てば消えた男のことなど忘れてすぐに代わりを欲しがるに決まっている。頃合を見てアンタがそのガキに取って代わればいいと言う男に、香山はドキドキと胸を逸らせた。 「……本当に……跡がつかないんですか……?」 「もちろんだ。大陸に売り飛ばしちまえば日本のデカだって手は出せねえさ。しかも売り飛ばす先は異国のマフィアだ。ガキの一人くらいどうにでもできるってもんだ」 「……あなたがその口利きをしてくださると?」 「ああ、任せろ。だがまあ、こっちも多少は危ねえ橋を渡るわけだ。タダってわけにゃいかねえがな」 「そ、それはもちろん……。本当に上手くやっていただけるなら御礼はします」 「そうかい。専務さん、アンタなかなか話が分かるじゃねえか。大陸の連中に話を持っていくにあたって袖の下ってわけじゃねえが多少の経費も掛かるからなぁ。それ相応の礼金は出してもらうことになるけどな」 「いくら……ですか? いくら払えばあのガキを消していただけるんでしょうか」 「そうさな、そのガキの使い道によって売り飛ばす金額は上下するだろうが、最低でも多少の金にはなる。その分を差し引いて、アンタには五百も払ってもらえばいい」

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