597 / 1190

孤高のマフィア24

 その後、鐘崎組の組員らと周の側近たちが合流し、手分けして質屋周辺の防犯カメラを当たることとなった。里恵子の恋人である森崎も組員たちを連れて合流、全員が一丸となって捜索に当たった。 「周さん、鐘崎さん、申し訳ございません! 里恵子の巻き添えで冰さんまで危険な目に遭わせてしまって……」  森崎は平身低頭で謝罪を繰り返したが、実のところ犯人の目的が里恵子だという確証はない。 「まだ里恵子の巻き添えと決まったわけじゃねえ。もしかしたら目的は冰の方かも知れねえんだ」  周に宥められて森崎は申し訳なさそうに肩を落としてみせた。  ここは都内の一等地だ。防犯カメラ自体はそこかしこに見つかったものの、時間帯は深夜である。既に閉店している店もあり、すべてをチェックするには朝を待たなければならないことも多く、思ったように捜索は進まなかった。 「こうなりゃ警視庁の丹羽に応援を仰ぐしかねえ」  誘拐事件として警察が介入すれば、防犯カメラの映像入手に加えてNシステムなどでも追跡が可能だ。正直なところ極道マフィアが警察組織に助力を願うなど、本来ならならば進んで頼りたくはない相手であるが、丹羽個人にならば打ち明けるのも有りといえる。八方塞がりの今、面子がどうのと言っていられる場合ではない。周と鐘崎は急ぎ丹羽に連絡を取ることに決めたのだった。  一方、里恵子と冰を拐った犯人は周らが血眼になっているその頃、既に西へ向かう高速道路上にあった。車中では薬物で意識を失った里恵子と冰を目に、愛莉が大文句をたれていた。 「信じられない! 誰が里恵子ママまで拐って来いって言ったのよ! 拉致るのはこの冰って子だけって話だったじゃないの!」 「仕方ねえだろ。そいつをふん縛ってる現場にそのママって女がやって来たんだ。大声出される前に咄嗟に薬を盛った俺らの機転を褒めて欲しいもんだね!」 「……ッ、そりゃ分かるけどー。ああもう! 信じらんない……! ママのイイ男性(ひと)はヤクザだって噂もあったのよ……? もしもアタシたちが犯人ってバレたら殺されちゃうわよ!」  愛莉は半狂乱で頭を抱えている。自慢の巻き髪をグシャグシャと両の手で掻き上げては唇を噛み締める。 「相っ変わらずガミガミうるせえんだからよぉ、お前は! とにかくこうなっちまった以上はギャアギャア騒いだってしゃーねえだろ。それに……さすが銀座のママってだけあってめちゃくちゃイイ女だしよ! ここは棚ボタだと思うしかねえだろが」  男の方は暢気だ。 「冗談じゃないわよ! ママのイイ男性(ひと)に知れたらマジでヤバいことになるって! 間違ってもヘンな気なんか起こさないでよね! ママに手なんか出した日には冗談抜きで殺されるって! 東京のヤクザを敵に回すなんて絶対にご免だわよ、アタシは!」  蒼白なのは愛莉だけである。

ともだちにシェアしよう!