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孤高のマフィア31

「里恵子ママさん、とんでもないことに巻き込んでしまって申し訳ありません。犯人たちの狙いは俺のようですし、ママさんには本当に何とお詫びしたらいいか……」 「ううん、そんなことない! でもさすがに周さんのパートナーだわ! 冰ちゃんすごく落ち着いて対応してくれたから、さっきの男の人もヘソを曲げなかったんだわ」  極端に怯えたり過剰に逆らったりすれば、相手を刺激して、からかいついでに小突かれたり暴力を振るわれていたかも知れない。冰が冷静且つ丁寧に接したことで先程の男も荒ぶらずに済んだのかも知れないと里恵子は礼を述べた。 「一先ずは落ち着けたけど、でもこれからどうしましょう。周さんたちもアタシたちが拉致されたことはとっくに気が付いているでしょうけど、さすがにこの場所までは突き止められるかどうか……」  冰のGPS付きの腕時計が奪われたとなっては、そこから追うのは難しいだろうと推測できる。 「そうですね……。俺の腕時計が何処にあるかにもよりますが、さっきの男の人が持っていてくれるなら案外すぐに助けが来ると思うのですが――」 「そうよね。さすがにこのホテルの場所までは分からなくても、周さんたちがあの男に辿り着けば鬼に金棒だわ」 「問題は……何らかの理由で腕時計のGPSが追えなかった場合のことをどうするかです。さっきの話だと俺たちを大陸のマフィアに売り渡すということでしたが、正直なところ売り渡してくれた方が道は開けるんじゃないかという気もします。それが本当に香港マフィアならば――の話ですけど」  確かにそうだ。本当に香港マフィアというなら、冰にとっては一応ファミリーということになる。仮にマカオのマフィアだったとしても、張敏をはじめ伝手がないわけじゃない。言語の点でも心配はいらないし、こちらの素性を話せば何らかの道は開けるかも知れない。問題があるとすれば、売り渡される先のマフィアというのが偽物だった場合だ。  ひとくちにマフィアといっても香港の周ファミリー直下ならばともかく、枝分かれした組織の下っ端の――そのまた下っ端などという可能性も高い。相手が幹部クラスならば話は通じるだろうが、それこそ周ファミリーの顔すら見たこともないようなマフィアまがいならば、何を言っても通じないだろう。色が目的の闇市にでも売り飛ばされるか、下手をすれば臓器を抜かれて――などということも有り得るかも知れないのだ。  いずれにせよ里恵子をそんな危険な目に遭わせるわけにはいかない。できることなら日本にいられる間に何らかの手を考えるのが必須だと踏む冰であった。

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