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孤高のマフィア71

 そうして怒濤の一夜が明けた――次の朝のことである。  朝とはいっても実際には昼近くという時間帯である。周と冰はもちろんのこと、同じく拉致に遭った里恵子と森崎、そして鐘崎と紫月も当然のことながらそれぞれに熱い一夜を過ごしたことは言うまでもなかろう。ようやくと起き出してきた一同を訪ねて来た人物がいると源次郎に聞かされて、ひどく驚かされる羽目となった。なんとその人物というのはマカオの張敏だったからである。それだけでも目を丸めてしまうところだが、彼が連れていたもう一人の男を見た瞬間に、冰と里恵子は思わず「あ!」と驚きの言葉がついて出てしまった。 「あなたは……確か」 「その節はお世話になりました」  張の一歩後ろで控えながら深々と頭を下げたのは一昨日の夜に冰がカジノで手助けをしてやった男だったからだ。 「まあ! あなた、ご無事でしたのね」  里恵子が驚いたように不思議顔でいる。というのも闇カジノは丹羽たち警察のガサ入れによって経営者も客も根こそぎお縄を食らったはずだからだ。 「実は……たまたま昨夜は顔を出さなかったものですから。今朝になってあの店が検挙されたことを知って驚きました……」  男は張のカジノで経営を手伝っている者だそうで、年に幾度か海外の様々なカジノへと出向いては世情を見て回っているとのことだった。  本場ラスベガスなどの大きな店にも出向くし、今回のように闇カジノのようなところへも行くらしい。客として他所の店のやり方など様々情報を収集して歩くというのだ。  そんな中で冰に助けられ、その見事過ぎる腕前に驚いた彼は、すぐさまボスである張に報告を上げたということだった。それを聞いた張は、助けてくれた人物のやり口や話していた言語、見た目などの特徴を聞いて、もしやと思ったそうだ。 「でもまさか東京から遠く離れた九州の、しかも闇カジノに雪吹君がいるわけもないと思ったんだがね。広東語を流暢に話していたというし、若いのに物凄い目利きだったとこいつが興奮しながら訴えてきたもんで、念の為に周焔さんの会社に連絡を入れてみたんだよ。ちょうど劉氏が出られたんだが、周さんも雪吹君も出掛けていて居ないというじゃないか! そこで劉氏に事情を話したところ、キミらが博多にいると聞いてね。居ても立っても居られずに朝一番の飛行機で飛んで来たというわけさ」  男が昨夜のガサ入れを免れたのは、張に連絡を取っていてカジノには顔を出していなかったかららしい。

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