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謀反2
事の発端はまさに今しがた男が言った通りで、マフィアの次期頭領を継ぐ周風――つまりは周焔 の兄であるが――が自分の世代の組織を固める為に側近などの人事を正式決定する動きが出始めたことに遡る。
この男も現頭領である周隼の全盛期には幹部とまではいかないまでも、まあ将来的にはそれなりの地位に取り立てられるだろうと思われていたものだ。
ところがいざ次世代のブレーンが決まってくる段階になると、扱いに不満を覚えるようになってきたのだ。もはや側近どころの話ではなく、下手をすると新入りの若い者らにも劣るような立場しか与えられず、当然男としては納得がいかなかったわけである。
前々から長男の周風とはそりが合わない向きがあったものの、こうまであからさまに酷い扱いを受けようとはさすがに想像もつかなかったというのが実状だ。
だが当の周風から言わせれば、この男が陰で後ろ暗い事に手を染めているのを知っていた為、こういった処遇にしたという理由があった。むしろ破門にせずに組織に置いてやっているだけでも分厚い待遇というところなのだ。
男の名は羅辰 といった。年は四十半ばで、若い頃から組織に入った人物である。
外見は厳つく体格もいい。マフィアとしての風格という点ではなかなかであるが、野心家で、己の利益の為なら他がどうなろうと構わないやり方と、筋者堅気の見境もなしに平気で人を騙して陥れるという数々の悪行が目立つ男だった。周風としては自らの側近として認めたいとは思わなかったのだ。
羅の方でもそんな風のことを綺麗事しか言わない温室育ちのお坊ちゃんと見下しているきらいがあって、これではそりが合わないのも当然といえよう。
そこへもってきて風の人事に腹を立てた羅辰は、これまでの鬱憤が一気に爆発した――とまあそんな具合だった。
「俺はファミリーを抜けることに決めたぜ。今はまだボスが健在だが、将来的にあの甘ちゃんの下で働くなんざまっぴらだ!」
酒を煽りながらそう吐き捨てる羅に舎弟の方も驚き顔で閉口してしまった。
「ですが兄貴……ファミリーを抜けてこれからどうしようってんです? もちろん兄貴が抜けるっておっしゃるなら自分はついて行きますよ? けど……俺らみてえな半端者がマトモな仕事に就くなんざ、いささか無理ってもんだと思いますがね……」
「は! マトモな仕事に就こうなんざ甚だ思っちゃいねえわ! それより俺はてめえで組織を構えて周風のヤツを見返してやるつもりだ」
憤る兄貴分の言葉に舎弟は驚き顔で眉をひそめた。
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