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謀反3

「見返すですって? ですがどうやって?」 「俺がファミリーを抜けりゃあ周風のヤツもしてやったりだろうからな。厄介払いができて清々したってな面をしやがるのは目に見えてる! だが、タダでおさらばしてやるつもりはねえ……! 抜けるついでにヤツの鼻っ柱を挫いてやろうと思ってな」 「鼻っ柱を挫く……ッスか? まさか周風の嫁でも寝取ろうってんですかい?」  あの姐様はめちゃくちゃ別嬪だもんなぁ、と想像しただけで鼻の下を伸ばしている。  風の妻というのは確かに超がつくほどの美女で、ここ香港のみならず近隣の裏社会でも羨ましがられているほどだった。何より当の周風が溺愛も溺愛というくらい惚れ込んでいて、とにかく目の中に入れても痛くないくらいの勢いで大事にしているのだ。そんな妻を横取りすれば、風にとっては何より痛手となるだろうと思うわけだ。  ところが羅の目的はそこではなかったようだ。 「はん! 確かにイイ女にゃ違いねえが、そんなもんを掻っ払ったところで大した銭にはなりゃしねえ。仮に闇市に売っ払ったとしてもたかが知れてらぁな」 「はぁ、そんなもんッスかねぇ。あれだけの別嬪なら相当高く売れるんじゃねえかと」  まあ金になるならない以前に、あんな美女を好きにできるなら、それだけで万々歳だと舎弟は浮き足立っている。ニタニタと緩んだ表情からは、ともすれば兄貴分が飽きた暁には自分もおこぼれに与れるかも知れない、と、そんな妄想を描いているのが丸分かりだ。 「てめえは相変わらずに考えが小せえったらねえな。いいか、女なんざ抱くだけならどれも一緒だ。特に美人は三日で飽きるって言うだろうが。俺が欲しいのはそんなちっぽけなもんじゃねえ。周風を、いや……なんなら周一族をひれ伏せさせられるくれえの金と権力よ!」  金さえあれば権力の方は自然と付いてくる、羅はそう言ってグビリとグラスを空にした。 「おい、バーテン! これと同じ物だ」  空のグラスをテーブルの上で滑らせて、お代わりを要求する。バーテンが『かしこまりました』と酒の準備を始めるのを横目に窺いながら、前々から思っていたことだが――と言って羅は自らの胸の内に秘めていたらしい計画を暴露し始めた。 「周一族が中国の山ン中にある鉱山の開発に関わってるのはお前も知ってるだろうが」 「ああ……ええ。少数民族の為とかなんとか言って道路開発に助成した結果、偶然にもえらい鉱石を掘り当てちまったっていう例の話ですかい?」 「そうだ。そこで掘り出された原石をごっそり掻っ払っちまおうって寸法さ」  ニヤりと男は下卑た笑いを浮かべてみせた。

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