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カウント・ダウンを南国バカンスで3

 そういえば周の出立ちも普段は殆ど目にすることがないラフで開放的なものだ。タンクトップの上に無造作に羽織られた粋な柄のシャツ、生地は薄く軽めだが光沢のある七部丈のパンツから覗く長い脚も格好いい。ピッタリとしたタンクトップを盛り上げている引き締まったシックスバックスの腹筋は言うまでもないが、パンツの裾からチラりとのぞいているすね毛でさえも色香を感じてしまう。  日本では夏場であっても仕事の時はスーツ姿だし、休日の普段着でもここまで開放的ではない。髪型もオンの時と違ってワックスなどで固めていないから、はらりと額に垂れている黒髪が艶かしい。かれこれもう二年以上も一緒に暮らしているというのに、なんだか知らなかった別の魅力を見たようで、冰はドキドキと心臓を高鳴らせっ放しでいるのだった。  到着したのは現地時間の午前中だった為、一旦ホテルにチェックインしてから皆で昼食タイムとなった。  ロビーに降りてみると、年末年始だけあってか観光客であふれていた。日本人の姿もちらほらと見掛ける。恋人同士だったり家族だったり友人と一緒だったりで、皆楽しそうだ。  周ら一行は混み合う街中を避けて、ひとまずホテル内のレストランで食事をすることにした。  周囲のテーブルには欧米人が多く、慣れない冰などはキョロキョロと忙しそうにして感嘆の声を上げている。彼らが飲んでいるトロピカルドリンクがいかにもハワイといった感じで高揚感が駄々上がりなのである。 「ね、白龍。俺もあれ飲んでみたい」 「ああ、トロピカルジュースだな。そんじゃストローを二つ突っ込んで一緒に飲むか」  今まさに隣の席の老夫婦がやっている最中だ。 「いいの?」  冰は嬉しそうに頬を染めた。それを見ていた鐘崎も羨ましく思ったのか、すかさず自分たちも同じ物をオーダーすると言って鼻息を荒くしている。 「はは、若も周殿も相変わらず姐様方にゾッコンですな! 素晴らしき!」  源次郎に冷やかされて、ドッと笑いが巻き起こった。  午後からはやはり同じホテル内のプールでゆっくり南国気分を味わうこととなった。本格的なマリンスポーツなどビーチへ出るには時差ボケもあるし、着いた初日くらいはのんびりペースで体調を整えようという思いからだ。ところがプールサイドへ陣取った途端に、とりわけ冰にとってはまたもやドキドキとさせられる場面に遭遇する羽目となる。周と鐘崎の元に女性たちが群がってきたからだ。  最初は欧米人の三人組だった。 『はーい、男前さん!』 『素敵ね! あなたたち、ハンサムだし私好みだわ。一緒に泳がない?』 『今夜お酒を一緒にどうかしら?』  と、矢継ぎ早に誘う文句もド・ストレートだ。さすがに外国人だなぁなどと紫月は余裕の様子で笑っていたが、周の肩や首に腕を回しての大胆なアプローチに、冰の心拍数は上がりっ放しだ。 「……やっぱり世界中どこに行っても女の人ってイイ男を見つける目は確かなんですねぇ」  ポツリと呟いた冰の言葉に、真田や源次郎などは微笑ましそうにフォローの言葉を口にした。

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