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カウント・ダウンを南国バカンスで4
「ご心配には及びませんですよ、冰さん。坊っちゃまのことです、すぐにスマートにかわされますぞ」
ニコニコとした真田の言う通りか、周は女性たちに向かってニヤっと笑みながらこう言った。
「すまねえな。俺には得難いハニーがいるんでね。他を当たってくれ」
女性たちは残念そうにしながらも軽く肩をすくめると、今度は鐘崎にまとわりつかんと即シフトチェンジだ。ところが、誘い文句を発する間もなく、
「同じく!」
短くそう言ってはヒラヒラと手を振り、『ご機嫌よう』と付け加えた。これではいささか女性たちが気の毒とも思える素っ気なさだ。
紫月の方は慣れっこなのか、まるで心配する素振りもなく、逆に『もうちょい愛想遣えねえもんかね』と笑っている。冰にとっては軽くカルチャーショックである。
「か、鐘崎さんも白龍もカッコいいから……モテるとは思ってたけど、ホントにお声が掛かってるところを見たら……何ていうかちょっとドキドキしちゃいました」
頬を染めながら可愛らしいことを言った冰に、紫月や源次郎、真田たちは微笑ましげに見つめ合ったのだった。
そんな健気な冰だが、しばらくすると今度は自分がナンパされる側を体験することとなった。ちょうど周と鐘崎が一服タイムで席を外していた時だった。
紫月は李らと泳いでいて、冰と真田で荷物番をしていたところ、二人連れの男性が後方からいきなり肩を抱いてきたのだ。金髪の欧米人で、なかなかに整った顔立ちのハンサムである。
「キミ、一人?」
「可愛いね! よかったら一緒に遊ばない? 俺たち、クルーザー持っててさ。これから沖へ出ようかと思ってるんだけど一緒にどう?」
いかにもフレンドリーな調子で、誘い文句も手慣れた感丸出しだ。冰にとってはこういったナンパなどは初めてのことである。しかも相手は同じ男性だ。
「あの……えっと、その……」
突然のことにバクバクしながらも、冰はすかさず先程の周らのことを思い出して、断り文句を真似ることにした。
「あの、お、俺にはハニー……じゃなかった、ダーリンがいるので……その……ごめんなさい!」
よせばいいのに、わざわざ正直に『ダーリン』と言ってしまうところが落ち度なのだが、そこが嘘のつけない冰だ。しどろもどろながら目一杯頭を下げて断った。ところがその慣れない様が気に入られてしまったのか、男たちはますます興味をそそられたようにして、諦める様子は皆無のようだ。馴れ馴れしく肩を抱き寄せては、頬にキスをする勢いで顔を近づけてくる。
「お若い御方、およしなさい! この方にはご主人がいらっしゃるのですよ!」
見兼ねた真田が冰を庇わんと制止に割って入ったが、逆に物笑いの種にされてしまった。
「ご主人って、まさか爺さん、アンタのことかい?」
「なに、キミ? もしかしてこんなお年寄りで満足してるっての?」
可哀想に、だったら俺たちが本当の快楽を教えてやるよとばかりに、なお一層しつこく迫る。
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