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カウント・ダウンを南国バカンスで9

「冰――あまり可愛いことをしてくれるな。さすがに理性の(タガ)が吹っ飛びそうだ……」  よしよしと頭を撫でながらも、それこそ”食べてしまいたい”気持ちにさせられる。 「時差ボケだが寝かせてやれそうにねえぞ?」  周の声音が少し色香を帯びていて、吐息の間合いも余裕がない。 「白龍……白龍! ん、いい。時差ボケよりも白龍が欲しい……。大好き……大好き!」 「ああ。俺もだ。俺も――」  この世の誰よりもお前を、あなたを、愛しているよ――  南国ハワイの熱風も息を潜めそうなほど、甘く激しく、そして熱いリゾートの夜に溺れたのだった。 ◇    ◇    ◇  そうして睦み合った後、二人はベッドの中で寄り添いながら余韻に浸っていた。冰はすっかり安心顔で、周の逞しい腕枕に抱かれながらうっとりと瞳を蕩けさせている。 「なぁ、冰。さっき一之宮みてえに余裕ある大人になりてえと言っていたが」 「え? あ、うん。そう、紫月さんはさ、鐘崎さんに女の人たちが寄って来ても『もう少し愛想遣えねえのかー』って言って笑ってたでしょ? それってすごいなぁって思ったんだ。多分、李さんや鄧先生でも同じような対応されるんだろうなって。俺はただオロオロしちゃって、白龍が盗られちゃったらどうしようなんて……思っちゃって全然余裕がなくてさ。だから皆さんのように大人になりたいって思ったんだ」  それでプールでもそんなことを言って落ち込んでいたわけか。 「だがな、一之宮だって昔は今のお前と似たようなもんだったんだぜ?」 「え、紫月さんが?」  冰は驚いてキョトンと瞳を見開いている。 「俺たちは高校の時同じクラスだったんだが、その頃から傍で見ててもあの二人が想い合ってるのは分かるほどでな。だが二人共どういうわけかぜってえ自分からは言い出さねえ。互いに好きだと分かってるのに想いを告げようとはしねえんだ。まあ今となってはその理由も想像がつくがな」  鐘崎は、仮に紫月への想いを告げてもしも叶わなかった時のことを考えたら勇気が出せなかった。告白して気まずくなるくらいならいっそこのまま親友という立ち位置で構わないから側にいたい――そんなふうに思っていたのだろう。一方の紫月もまた、鐘崎組の跡取りである彼に同性の伴侶など、彼の将来を壊しかねないと遠慮して想いを封じ込めていたようだと周は言った。

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