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ダブルトロア37
しばらくすると読み通りか、数台の車が到着し、周兄弟と鐘崎らが迎えにやって来た。
周らは皆の無事に安堵し、まるで焦燥感いっぱいといった様子で駆け寄ってはそれぞれの伴侶を抱き締めた。
乱闘覚悟で勢い込んできた割には肝心の暴走グループがいないことと、皆の中に楚光順 の元部下だった楊宇 の顔を見て驚いたものの、曹や美紅から事情を聞いて一先ずは納得となったのだった。
「そうだったか。しかし皆で協力して、よくぞ乗り切ってくれたな。優秦が暴走グループを差し向けたようだと聞いた時には肝が冷えたなんてものじゃなかった」
「兄貴の言う通りだ。戦慄が走ったぜ」
「まあお前らのことだ。曹先生や鄧先生もついててくれるしと思って、何とか時間を稼いでくれることだけを祈ってここまで来たわけだが」
三者三様、旦那たちが安堵の溜め息を漏らす。戦々恐々の勢いで駆けつけたものの、皆が朗らかに談笑している様子を見て、それの方が驚かされたくらいだったのだ。とにかくは無事で良かったと、誰もが肩を撫で下ろしたのだった。
「ところで周風、楚優秦 のことだが……彼女は今どうしているんだ?」
曹が訊くと、彼女を尾行した李らが企ての確たる証拠を押さえた時点で周風の部下たちが確保したとのことだった。
「今は我々の滞在しているホテルの部屋で見張りをつけている。帰る頃には父親の楚光順 も到着するだろう」
既に光順にも連絡済みだそうだ。
「あの親父さんが知ったら、さぞ心を痛めるだろうな」
「その点は我々にとっても痛いところだが致し方あるまい。今後のことは光順 と話し合って決める」
では警察には突き出していないということか。まあ光順 の胸の内を思えばそうするしかないだろう。
「優秦への制裁は香港の親父にも報告してからだ」
こうして一旦は無事に落着し、一同はホテルへと戻ることになったのだった。
◇ ◇ ◇
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