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ダブルトロア36
「まあアレだよね。今回は偶然にもこの日本刀が手に入ったってのが大きかったスよね。実は以前、ウチの組に暴走族の鎮圧に手を貸してくれって依頼が来たことがあったんですよ。そん時に遼と組の若い奴らと一緒に乗り込んで行ったんですけど、さっきと同じようなパフォーマンスを披露してね。そしたら族のヤツらがおとなしくなってくれて、鎮圧はあっけなく成功したんです。ヘンな話ですが、その後は一気に和気藹々になってね。ウチん組に入りてえって言い出すヤツまで出てくる始末で」
例え国は違えども、同じような暴走グループなら思考は似たようなものではないかと思ったのだそうだ。
「ヤツらには到底無理だろうって大技を見せつけることで鎮圧したってことだな?」
曹がなるほどとうなずく傍らで、
「アレですね、昔流行ったチキンレースのようなものでしょうか。断崖絶壁まで二台が全速力で走り、どちらがよりギリギリまで行けるかっていうやつ」
昔はそれで度胸と根性を測り、負けた方は素直に引き下がったものですよと、鄧も懐かしそうに笑った。
「チキンレースとは、これまた鄧浩の口からそんな言葉が出るとは!」
曹がまたもや受けながらも、紫月の技を讃えてみせた。
「しかしまあ、あの状況で咄嗟にあんなことを思いついて、しかも実際にやってのけてしまうんだから! やはり紫月君はすごいお人だ。それも日本刀で峰打ちとは、あの長刃を目にしただけでも外国人の彼らにとっては腰が抜けただろうな」
「しかも仕草が逐一粋なんですよ。あんなに不安定な体勢で峰打ちというのも信じ難いが、刃による切り傷は一切つけないというのは、もはや神業としか言いようがありませんよ。私は離れた位置で全貌を拝見できたので圧巻でした!」
曹と鄧にベタ褒めされて、紫月は照れ臭そうに頭を掻いた。
「うわぁ、俺も見たかったなぁ」
冰が暢気な声を上げると、
「何言ってー! 冰君のトイレットプリーズっちゅう演技もサイコーだったじゃね!」
そうですねと言って皆で盛り上がった。適材適所というのだろうか、皆それぞれに自分の役割をきっちりとこなしながらも、仲間を信じて互いの背中を預け合うことができた。窮地を乗り越えられたのはそんな絆が築けた賜物だと、誰もが清々しい表情を輝かせるのだった。
◇ ◇ ◇
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