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倒産の罠4

「我々日本の警察も動いていますが、敵の手口が狡猾で、実態を掴むのに苦労を強いられております。上層部からも鐘崎の組に助力願うしかないということで、私がその窓口を仰せつかることになりました」  丹羽は普段から鐘崎らとは懇意の仲だが、さすがに香港マフィア頭領(ドン)本人を前にして緊張気味でいるらしい。次男坊の周焔(ジォウ イェン)は鐘崎の親友であるから、その周とも幾度か顔を合わせてはいたものの、ファミリーの中にいる彼を見るとまるっきり雰囲気が違うように感じているようだった。  そんな丹羽の緊張を解すかのように周がクスッと笑む。 「そう畏まることはねえ。普段通りのアンタでいいんだ。余分な気遣いのせいで本筋に全力を注げなくなると困るからな」  大海を眼前に気疲れしてしまっては元も子もない。周に続いて兄の(ファン)も父の(スェン)も同意だと言ってうなずいた。 「(イェン)の言う通りだ。我々に気遣いはいらない。それよりここ半年でヨーロッパでも同様のことが起こり始めたそうだな。インターポールも動き出したと耳にしたが」 「ええ。ヨーロッパではまだほんの数件ですが、アジア圏で横行している波がいよいよやって来たかという見解のようです。なんとか尻尾を掴まんと画策しているようですが、これといった突破口は掴めていないようで」 「なるほど。それで日本ではどのくらいの被害が出ているのだ?」 「我が国で狙われたのは中堅から大手一歩手前という企業がほぼ九割を占めています。さすがに全国民がその名を聞いたことのあるような大企業までは手を出されておりませんが、今は予行演習的な実験で中堅企業を狙っているとも窺えます」 「とすると、いずれはデカく勝負に出てくる前段階ということか」 「そうなる前に仕留めたいというのが我々の狙いです」  丹羽の言うには、インターポールとしても今のところ被害の数が指折り数えられる程度なので、本格的に動くには至っていないという。 「現段階では各国ごとに独自の対策を取るようにという方針だそうです」  詐欺集団が各国の中堅企業を乗っ取るということからして、相当大きな組織であることは間違いない。丹羽の話にもあったが、やり口が巧妙で、敵の実態すら掴みきれていない。つまり、まだどこの国でも黒幕の顔さえ拝んだことがないというわけだ。 「ここ香港でも被害が増えているのは事実だ。試しに乗っ取られた企業のひとつにウチの曹来(ツァオ ライ)を潜入させてみたところ、実行犯と思われる数人との接触に成功した。ただし肝心の黒幕までは辿り着いていない」  下っ端をいくら押さえたところで、トカゲの尻尾切りで終わってしまうのは目に見えている。 「幸いにして曹が上手く立ち回ってくれているのでな。組織の中で信頼を積み重ねていけば、いずれは黒幕に当たることもあろうかとは思うが、期待は五分五分といったところだ」

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