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身勝手な愛3

「それはそうと――ご長男の周風老板(ジォウ ファン ラァオバン)はご結婚なされてお子も授かったそうじゃありませんか。しかも生まれた赤ん坊は男の子だとか。あの頃、妾の子だからという理由で焔老板(イェン ラォバン)を邪険にしていた側近の重鎮連中にとってはさぞかしご満悦でしょうね」  ふん――と、嫌味ったらしく言う。 「――おい、言葉が過ぎるぞ」 「ああ、失礼。別に悪い意味ではありませんよ。ファミリーもご安泰で実に結構と言ったまで。それより焔老板の方はどうなのです? もうあの方もいいお年頃、ご結婚はなされたので?」  少々図々しい質問に答えてやる義理はない。 「――そんなことよりお前さんの方だ。まさか焔老板に会う為だけに来日したというわけでもあるまい。この日本で一旗上げようなんざ考えているわけではなかろうな」  じろりと鋭い視線をくれられて男はタジタジと苦笑気味だ。 「そんな大層なことは考えておりませんよ。ですが、まあ……ちょっと仕事の用向きもありますのでしばらくはこの国に滞在するつもりです。ファミリーを離れたとはいえ、その後も東南アジアでは裏の世界にそれなりのパイプがありましたのでね。焔老板のお役に立てることがあればとは思っています」 「役に立てることだ? ファミリーを抜けたお前さんが今更何を言う」 「私はね、李さん。ファミリーを抜けたくて抜けたわけじゃないんです。あの頃――あなたも私も組織の重鎮たちからは何かと疎まれていた焔老板の下にいた。自分のボスが邪険に思われているのはどうにもいけすかなくてね。世界的に活躍できるモデルになれれば顔も広がる。少しでもいい情報が提供できて焔老板のお助けになれる。そう思ったからこそファミリーを去ったのです。今でも私のボスはあの人だけだと思っているんですよ」  だから少しでも周の役に立てることがあれば惜しみなく力になりたいなどと言う。李はますます呆れてしまった。 「焔老板はご覧の通りご自身のお力で起業なされて経営も順調だ。力を借りる必要などない」 「順調とおっしゃいますが、それは表の企業経営に於いては――ということでしょう? あの方だって本来はマフィアだ。今ではすっかり堅気として成功なされているようですが、私は裏の世界でも……というよりは裏の世界でこそあの人には頂点にいて欲しいのですよ。その為ならどんなことだって惜しまない。ですが――正直なところ残念と思うのも事実です」 「残念――だ?」

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