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身勝手な愛27
こんなふうに拉致監禁までして邪魔にすれば、それを知った周は当然怒るはずだ。犯人が郭芳と知れれば周の信頼を失うことにもなろう。
「郭芳さんはいったい……何が目的なのでしょうね」
思い当たるとすれば、郭芳が周に対して尊敬以外の特別な感情を持っているかも知れないということだ。
(もしかしたら郭芳さんは白龍のことが好きなのかも……)
そうであれば一連の言動にも納得がいく。
(俺を白龍の側から追い出して、郭芳さんが白龍の伴侶となりたいということだろうか)
そうして二人で父・周隼の後を継ぎ、ファミリーのトップとなることが目的だとして、その際反対しそうなこの重鎮方を拐って監禁した――と考えれば筋は通る。だがそうであるならこの重鎮方を素直に帰すつもりなど到底ないということになる。解放すると言いつつ、密かに始末してしまうつもりでいるのかも知れない。
重鎮とはいえ、彼らは皆ご老体だ。屈強な感じの手下を連れてもいたし、その気になれば簡単に葬ってしまえるだろう。
(でもそれなら――俺のことも一緒に始末してしまえばいいだけじゃない? わざわざリモートで繋いでまで周家から籍を抜いてくれなんて言わせる必要があるだろうか。それとも俺を……この重鎮方を拉致した犯人に仕立て上げようとでもいうつもりなのか――)
いずれにせよ郭芳が何を目的とし、どう動こうとしているのかを知る必要がある。ここはひとつ、また大掛かりな演技をかまして彼の懐に飛び込んでみるのも手か――。冰は冷静に幾筋もの可能性を巡らせながら、どうすれば郭芳の気持ちを逆撫でせずにこの重鎮方を守り通せるのかを考えるのだった。
「皆さん……ひとつお願いがございます」
冰が神妙な顔つきで皆を見つめた。
「何であろう。我々にできることなら何でも言うてくだされ。あんたは我々の為に危険を顧みず薬を取り戻してくれたり……正直なところ皆申し訳なくて……自己嫌悪感でいっぱいなのじゃ」
「そうとも! わしらが焔君を邪魔に思ってきたことも事実じゃ。それなのに……こんな我々の為にあんたは良くしてくれる……。申し訳ない気持ちしかない」
老体揃いで何ができるということもなかろうが、それでも精一杯力になりたいと満場一致でそう言った。
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