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身勝手な愛34

「それともあの人がこの香港に戻ってくれさえすれば、例えボスの座につけなかったとしてもある程度は満足できるの?」 「そ……れは……」 「抜き身の刃がどうとか言ってたけど、そんなおっかない人の側にいて幸せを感じるなんて――俺には理解できないけどなぁ」 「それは……! キミはあの人のオーラを知らないからそんなことが言えるんだ! 若かった頃のあの人は――この爺さんたちや、他にもいろんなところでいろんなヤツらに白い目で見られて……でもそんな敵対心など物ともしないくらいに堂々としていらした! まるで凍てついた氷のような目で周りを圧倒し、従えて……。そんなあの人が素敵だと思ったんだ。彼の側に居れば、いつかはすごいことをやってくれそうで……心が震えた。私はあの緊張感の中であの人を見ているのが堪らなく幸せだったんだ……!」  そんな話をしていると、また別の手下がやって来て周一族とリモートが繋がったとの報告が入った。 「うわ……繋がっちゃったって。郭芳さん、マジでどうするつもりさ。アンタが犯人だってバレたら、それこそおっかなーいあの人が見れるかも知れないけど……。っていうか、おっかないを通り越してあなたどうなっちゃうか分からないよ? 何なら今の内に逃げちゃうって手もあるけど――」 「逃げるだなんて……そんな卑怯なことはしたくない! 私は……例え自分が始末されようとあの人がマフィアの心を取り戻してくれさえすれば本望だ……」 「うわぁ……何てこと言うのよ。そんじゃ俺はどうなるのさ。籍は抜いてもらえない、アンタまでとっ捕まって、また元の鞘に逆戻りかよ?」 「……すまない……。キミのことを誤解していた私が悪いのだが、あの人が腑抜けになったのはてっきりキミのせいだと思っていたから……」  もう自分の手には負えない。あとはキミ自身で何とかしてくれと言い出した郭芳に、冰は深い溜め息を抑えられなかった。 「冗談じゃないよー! あんな紙切れに署名までして送りつけたってのにさぁ。今更あれはほんのジョークでしたなんて言って通用するとでも思う?」 「……はぁ、だからすまないと言っている」 「んー、もう! しゃーない。じゃ、自分で何とかするよ! それで――? この場所教えちゃっていいの? どのみちこの人たちを解放しなきゃなんないんだから、迎えに来てもらわなきゃでしょ? 彼らがやって来る前にアンタたちが逃げるってんなら止めないけどね」  そうこうしている内に手下がパソコンを手にしたままソワソワとし始めた。 「郭芳さん、相手が早くしろと苛立っている様子ですが――」  すると、郭芳は諦めたように肩を落として微苦笑した。

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