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陰謀14

「俳優……だって? メイ、この男を知っているのか?」 「ええ。確か……タイかどこかの映画に出ていた子役の方よ。実は私、このシリーズのドラマが前から気になっていて観ていたんだけれど、最近は紅龍が生まれたばかりでなかなかゆっくり観る時間が取れなくて。それで録画してためてあるの」  紅龍というのは二人の子供の字だ。美紅の紅を取って、赤子の字は紅龍となったのだが、今はとにかくその子役の件だ。美紅曰く、気に入って観ていたそのドラマが劇場版になった際に子役で出ていた俳優だと言うのだ。 「……間違いないのかい?」  もう一度よく見てみてくれと画面を確認させる。 「ええ、間違いないわ。映画ではそれほど出番が多いというわけじゃないんだけれど、王国の王子役だった子よ。ここに――ほら、見て。この子の額の脇の方。髪で隠れて見づらいけれど、ここにちょっと大きなホクロがあるでしょう? 映画では王子の衣装だったから印象も違うけど、ホクロの位置と形は同じだわ。この俳優さんで間違いないと思うわ」  何とも驚きだ。 「メイ……もしかしてその録画というのは今も残っているかい?」 「え、ええ。後でゆっくり観ようと思って、ドラマと一緒に残してあるけど」 「それを観せてくれ!」 「ええ……もちろん」  美紅にとっては何が何やら訳が分からないながらも、男二人がこうも逸るところを見ると、何かよほどの訳ありなのだと思ったのだろう。すぐにレコーダーのある隣のリビングへと案内してくれた。 「ほら、これよ。確か……王子様の出番は映画の中盤くらいだったかしら」  録画を適当に送ると、まさに驚くべきか確かに同一人物と思われる子役が出演していて、風と曹は顔を見合わせてしまった。 「……本当だ。ホクロの位置といい形といい、この男で間違いないようだな」 「名前は――? この子役の名前がスタッフロールにあるはずだ!」  ラストのスタッフロールを確認すると、彼の名が明らかとなった。 「チャンサンか――! 曹、急いでこれを」 「分かった! すぐに調べよう」  逸る思いでネット検索をすると、件数は少ないながらもその映画の番宣などが引っ掛かってきたのだ。 「出演は……この映画が初めてのようだな」 「というよりも、今のところこれ一本だけのようだ」  役的には端役同然で、美紅の言うように登場シーンも少ない。だが、間違いなく本人だ。 「でかしたぞ、メイ! これで突破口が開けるかも知れん!」 「風、俺はもう少し詳しくこの子役について洗ってみる! 少し時間をくれ」  曹は急ぎ調査に乗り出すべく部屋を後にしていった。  後に残った風は美紅に事の次第を説明。子役が焔の息子かも知れないと聞いて、彼女もひどく驚いていたが、何よりも冰のことが気に掛かってならないようだった。 「そうでしたの……。白龍はもちろんでしょうけど、きっと冰が心を痛めているわね」  同じ妻という立場の義弟のことが何より心配のようだ。風はそんなふうに案じてくれる妻を有り難く思うのだった。 「とにかく――焔に連絡だ。曹と共に汐留でも調査すれば、互いに別の角度から情報が掴めるやも知れん」  風は美紅と共に早速汐留の弟へとリモートを繋ぐことにした。

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