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陰謀13
「だがお前さんたちは怪我の状態もかなり重かった。そんな状況下でガキをこさえるなんざどう考えても無理としか思えんがな」
医学的にはどうなのだと曹は言った。
「あの時同行していたのは俺たち側近の他には――医師の鄧兄弟も一緒だったろうが。何なら鄧海にも訊いてみるか?」
当時の焔が負った怪我の状態で、医学的にそういう行為が可能だったかということだ。
「ふむ、焔の方でも鄧浩が現在親子鑑定を進めているそうだが――。その鄧浩も陰謀を疑った方がいいのではという見解だそうだ」
「陰謀か――。普通に考えればそうなろうな。だいたい、相手の女はなぜ十五年も経った今になってそんなことを言い出したのかということだ。本当にこの画像の男が焔君の息子だというなら、孕ったことが分かった時点、もしくは生まれた時点で言ってきても不思議はないはずだ」
「汐留でも見解は同意見のようだ。俺も陰謀の線が濃いとは思う。となると、相手の目的だ」
単純に考えれば『金』ということになるのだろう。
「焔君から養育費を取りたいというのが目的なのか――。相手の女は周家が香港の権力者だと知っているわけだから、やはり目的は金と考えるのが妥当だろうとは思うが……」
あるいはもっと大掛かりな要求を考えているのかも知れない。
「それで――焔君は何と言っているんだ。親父さんやお袋さんはまだこのことを知らないのだろう?」
「ああ。それはもう一度焔と相談してからだが、いずれにせよ親父に黙っておくわけにはいかんだろうな」
今すぐに告げずとも、隠し通すのは無理がある。
「とにかく――美紅にもこの男の画像を見せて印象を訊いてみようと思うんだが。もしかしたら我々男の目とは違った見方があるやも知れんしな」
と、ちょうどその美紅がタイミングよく風の元へとやって来た。生まれたばかりの赤ん坊を風呂に入れて寝かしつけてきたところだったようだ。
「あら、曹先生! いらっしゃい」
「奥方、お邪魔しております」
「お仕事のご相談かしら」
邪魔になるようなら向こうへ行っていましょうかと微笑んだ美紅の気遣いは相変わらずによく出来た嫁さんといえる。
「いや――実はな、メイ。貴女にもちょっと見て欲しいものがあるのだ」
風はパソコンの画面を彼女に向けると、この男についてどう思うかと訊いた。女性の視点でどのように感じるか、風と曹とで彼女の様子を注意深く窺う。母になったばかりの彼女の目からすれば、案外自分たちの気付かないような何かを感じ取るかも知れないからだ。
ところが美紅は二人が考えていた以上に驚くことを言ってのけた。
「あら……! この俳優さん。貴方もご存知でしたの?」
「え――?」
「俳優――?」
俳優とは驚きも驚きだ。期待以上どころか、唖然とさせられてしまうほどの見解に、男二人は逸ったように瞳を見開かされてしまった。
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